今日という日が終わるまであと4,5時間。

名無しは大量のプレゼントを持って自室に戻るところだった。
今日は名無しの誕生日で、朝からプレゼントをもらったり、会うたびに祝ってもらったりで(夜行大所帯なので)結構忙しかった。
夕食のとき「ハッピーバースデー」をみんなで歌ってくれてケーキまで出てきたときはさすがに驚いたがとても嬉しかった。
今、みんながドンチャン騒ぎしているところを「主役」のくせに抜け出してきたのはいつもより飲みすぎてしまったお酒の酔いを醒まそうと思ったからである。
誰もいない部屋を見て名無しは小さくため息をつくのをとめられなかった。
今これ以上ないくらい幸せのはずなのになぜかと聞かれれば答えは一つ。
今日正守とほとんど会っていないのだ。
朝一言お祝いを言ってくれたのだが、その後はまともに話すことも出来なかった。
我ながら贅沢な悩みだとは思うのだが、こういう日に限って彼は忙しくて、なんとなく今日は一緒にいたいと思っていたのに、部屋で書類をしている姿すらなかったから(いたらそこで本でも読もうかと思っていた)、ちょっとさみしかったのだ。

「ビンゴ」
「っ!?」

突然後ろから声がして名無しはプレゼントを落としてしまった。
振り向くと正守が立っていて、名無しが抜け出すのが見えたから、部屋だろうと思ったんだと得意げに笑う。
なんでわざわざ追いかけてきてくれたのだろうとか考えてるうちにいつの間に距離をつめたのか正守の腕が腰にまわっていた。
はっとして顔を上げるとそれを狙ったかのように正守の唇が名無しのそれに重なる。
最初ついばむような優しいキスは、次第に深くなり酸素を求めてわずかに開けた隙間から舌が入ってくる。

「っ…ん…ふぁ」

正守の着物を握り締め懸命に応えていた名無しは、解放されたときには既に自分の力では立つことさえままならず、正守に支えられている状態だった。
正守の胸にもたれて息を整えている名無しの耳元で正守が低くささやく。

「やっと2人きりになれた」

低く、甘い響きを含んだその声はゾクリ、と名無しの身体を熱くさせた。
朝から全然会えなくてさぁ、困ってたんだよね、なんて言いながら自分を布団に組み敷いて、射抜くような目をして笑う正守がかっこよくて名無しは赤くなる顔を隠せもせずに目をそらした。

首筋を通り、鎖骨にかかり印を散らしていく正守にいちいち反応してしまうのが恥ずかしくて、声が漏れないように自分の手の甲で口をふさぐ。
眉を寄せて、正守の愛撫によって漏れる声を必死に抑えようとしているその姿がさらに正守を煽っていることを名無しは知らない。
今日は優しくしてやれそうもないな、理性が効かなくなった頭でそう考えて正守は愛しい彼女にもう一度キスを落とした。






おだやかな顔で眠っている彼女の髪を正守はそっと梳いた。
結局、もうムリと言う彼女に耳をかさず気を失わせるまでやったのだから全くどっちの誕生日だかわからない。
『正守が、いてくれて、幸せだよ』
意識を飛ばす直前微笑んだ名無しの言葉は、正守が名無しに対して思っていることそのままであった。
月明かりに照らされて透き通るように白い名無しの首筋に1つ紅い花を咲かせて、起きたら怒られるかなと密やかに笑う。
彼女と自分の左の薬指に光る真新しいリングに気づいたら名無しはどんな顔をするのだろうと、腕の中の彼女にキスをした。

「誕生日おめでとう、名無し」

口づけと共に落とされた祝福。
時計が新しい一日を刻み始めた。


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