駆け引きはいつだって先手必勝[2]
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斎藤さんの両肩に手を置き、背後のドアに縫い止める。

「なっ、」

恐らく、何をする、と続くであっただろう台詞。
私は肩に掛けていたバッグを荷物置きに投げ出し、顔を寄せてその言葉を遮った。

重ねた唇。
斎藤さんの身体が大きく揺れる。
すぐ目の前に、丸く見開かれた双眸があった。

「止せっ、あんたは一体何を…っ、」

唇を離した途端、焦った口調で抗議する声。
私はそっと笑って、斎藤さんに身体を密着させると耳元に顔を寄せた。

「期待、してたくせに、」

ぴくん、と跳ねた肩。
ちらりと横目で窺えば、斎藤さんの顔が瞬時に赤く染まった。

抵抗がなくなったのを確認して、もう一度唇を押し付ける。
強引に歯列を割り、その奥に舌を押し込む。
そして、逃げ出す斎藤さんの舌を追いかけ絡め取った。
少し薄めな舌の形を確かめるようになぞり、舌先を突つき、再び全体を包み込むように舐め上げる。

「……ん、ふぅ……っ、」

斎藤さんが唇の隙間から漏らした吐息に、堪らなく欲を掻き立てられた。
わざと舌を一度引き、歯茎や上顎を緩やかになぞる。
決して斎藤さんの舌に触れないように気をつけながら、口内を弄る。

「…んっ、」

そうすれば。
焦れた斎藤さんが、自ら舌を差し出してきた。

ねえ、堕ちてくれたね。

ご褒美をあげる、と再び舌を絡めて激しく吸い上げる。
斎藤さんの息遣いがどんどん荒くなっていく。
私はキスを続けながら、夏だというのにしっかりと締められた斎藤さんのネクタイに指を掛けた。
ある程度のところまで引き下ろし、これまた上まで留められたワイシャツのボタンを外していく。
斎藤さんは少し身を捩ったが、背後はドア。
当然逃げる場所はない。

ねえ、そんな理性は今すぐ全部奪ってあげるから。

ゆっくりと唇を離す。
私を見つめる藍色は、理性と本能とがせめぎ合って揺れていた。
荒く繰り返される呼吸、大きく上下する肩。
肌蹴たワイシャツからは意外と筋肉質な胸板と腹筋が覗き、色白の肌と紺のネクタイとのコントラストが綺麗だった。

「いただきます、」

耳元に唇を寄せて、そう囁いて。
私は頭を下にずらし、その胸元を大きく開いた。
姿を現した薄いピンクの飾りを、伸ばした舌で舐め上げる。

「ひぅ…っ」

大きく揺れた身体に、思わず笑いが漏れた。
そのまま小さな粒を愛撫する。
舌を絡め、口の中で転がし、舌先で突つく。
唇で柔らかく挟み、時折歯を立てれば、その度に斎藤さんは小さな呻き声を漏らした。
思っていたよりもずっと良好な感度に、私の期待は膨らむ。
左手でもう片方の突起も捏ねれば、斎藤さんの吐き出す息は一層熱を帯びた。

「はっ、…ぁ…っ、」

斎藤さんが身体を震わせる度に、背後のドアが音を立てる。
左手はそのままに唇を離せば、薄いピンク色だったそれはいつの間にか真っ赤に熟れていた。

「……ねえ、気持ちいい?」

再び耳元に顔を寄せてそう聞けば、斎藤さんは否定するかのように首を横に振った。
その瞬間、左手で飾りに爪を立てる。

「あッ、」

跳ねた身体。
その目元は赤く染まり、唇がだらしなく半開きになっている。
ちらりと下肢を見やれば、彼の欲望がどうなっているかは一目瞭然だった。

「ねえ、嘘は嫌いだな、」

形の綺麗な耳朶を、唇で食む。
そのまま耳の縁を舐め上げれば、斎藤さんの唇から震える声が漏れた。

「…き、もち…いい…っ」

その掠れた低音に、私の芯がそっと疼く。

よく言えました。

私は右手を下ろし、スラックスの上から彼の欲望を撫で上げた。





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