抱いた夢の果てに[4]
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初めて目にする、秘められたその場所。
顔を埋め、溢れた蜜を何度も舐め取った。
そこが潤うのは、感じている証だと言う。
それはつまり、彼女が俺で感じてくれたということを意味していて。
その事実だけで、俺は堪らないほどの興奮を覚えた。

「指を、」

そう言われ、左手の人差し指をそっと泉に埋める。
柔らかく吸い付いてくるそこは、不思議な温もりに満ちていた。
これが、女子の中なのか。
言われた通りに抜き差しを繰り返し、関節を少し曲げて内壁を擦る。
響く淫靡な音に、欲望が刺激された。
今からこの中に身を埋めるのだと思うと、それだけで下肢が期待に震える。

「…ん、っ、」

不意に彼女の唇から漏れ聞こえた音に、はっと顔を上げれば。
彼女が眉間に皺を寄せて目を細め、何かに堪えるような表情をしていた。

「す、すまぬっ。痛む、のか?」

指の動きを止め、その顔を覗き込む。
すると彼女は苦笑し、ゆっくりと首を横に振った。

「違うよ。…ねえ、もっと。気持ちいいの」

その唇から紡がれた、俺を強請る言葉。
これほどまでに甘美な誘いを、俺は知らなかった。

「…中に入っても、良い…だろうか」

その瞳を真っ直ぐに見下ろす。
やがて返ってきた首肯に、気がおかしくなりそうだと思った。
逸る気持ちを抑え、血管を浮かび上がらせて震える怒張を彼女に宛てがう。

「きて、」

そして崩壊した、最後の理性。

ぐ、と彼女の中に押し入ると、すぐさま内壁が俺に絡み付いた。
その、想像以上の快楽に、危うく挿入した直後に果てそうになる。
それではあまりにみっともないと、俺は腹筋に有りっ丈の力を込めて歯を食い縛った。

最奥まで辿り着き、ゆっくりと引き戻す。
絡み付く熱は俺の形に馴染み、欲望を余すところなく包み込んだ。
このような快感がこの世に存在するということを、俺はこの時初めて知った。

愛しい人と繋がるということは、こうも幸福なものなのか。

「…はぁっ、ナマエっ、あ、……く、」
「ん、ぁぁ…っ、さいと、く…っ」

脳髄を震撼させる、彼女の嬌声。
溢れ返った互いの蜜が、激しく音を立てて零れていった。

「…イきたくなったら、イって、いいか、らねっ、ぁ…っ、直前、で…抜い、て…っ」
「…承知、した…っ」

止められぬ腰の動き。
与えられる快楽を全て貪ろうと、激しく貫く欲望。

やがて訪れる、限界。

「…くっ、ナマエ…っ、もう、っ、」
「ん、ん…、イって…っ」

最後に、最奥までを大きく抉る。
背筋を駆け上がった、気絶しそうなほどの快楽。
それは彼女の上で大きく爆ぜ、白濁を撒き散らして果てた。



夢が、終わろうとしていた。

あの日、副長の前で告げた己の言葉を思い出す。
この想いが叶わぬものだとは承知している故、せめて一度。
一度で良いから、彼女をこの腕に抱きたい、と。

その夢がいま、終わりを迎えようとしている。

「参考に、なった?」

その言葉が、俺を夢の中から引き摺り出す決定打となった。
一夜限りの、そして彼女にとっては心すら伴わぬ情事。
分かりきっていた結末にそれでも項垂れた俺に、次の言葉は衝撃的だった。

「…引き受けるんじゃなかったな、」

はっと顔を上げれば、月明かりに浮かんだ悲しげな笑み。
心が手に入らぬことなど、初めから承知していた。
それでも、僅かなひと時だけであっても、どうか幸福な夢を見させてほしい、と。
そう願ったこの時間すら、彼女に否定されて。

「それは、何故だ……その、良くはなかったと、いうことか」

全て彼女に誘導され、抱いたというよりも抱かせてもらった、と表現した方が正しいこの状況。
彼女には苦痛の時間だったのだろうか。
情けないほど快楽に溺れたのは、俺だけだったということか。

そう、縋り付く思いで見つめた先。
彼女が苦笑した。

「…私が教えた方法で、他の女の子を抱くんでしょう?…それは、ちょっと嫌かもなあって、」

その言葉の意味を、俺は咄嗟に量りきれなかった。

「…それは、どういう…」

声を震わせた、俺に向かって。
彼女が困ったように微笑んで。


「斎藤君のこと、好きになっちゃったみたい」



どうやら、俺の夢はまだ終わらぬらしい。



抱いた夢の果てに
- 貴女の愛があった -




あとがき

ハク様

この度は、20万HIT感謝企画にご参加頂きありがとうございました。
女のイロハを教える、ということで、まず思いついたシチュエーションがこれだったのですが…明らかに甘さが足りず申し訳ありませんっ。短編として書くには無理があったかと、今更反省しております。設定も何だか曖昧な感じで…中途半端になってしまいました。本当はもっと恥ずかしがる可愛い一君になる予定だったのですが、書き終えてみればなぜかただのヒロイン攻めという…(泣)。
書き直しは随時受け付けておりますので、お気に召さないようでしたら遠慮なくお申し付け下さい。
思わずニヤリとしてしまう素敵なリクエスト、ありがとうございました(^^)




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