[-良き夢を-[1]
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ナマエ Side



虎徹さんと別れて帰路につく。

半ば自棄酒のつもりで飲んだのに、こういう時に限って全然酔えないのはどういうことか。
残念なことに、頭は冴え渡っていた。

あとは、お前があいつをどう思ってるかだろ?

先ほどの虎徹さんの言葉が蘇る。
全くもってその通りだ。
彼は正しい。
逃げていたのは私だったと、星空の下自覚する。

汚れているから、相応しくないから。
そうやって言い訳をして、結局大切なものを作るのが怖かっただけだ。

愛情を受け止めて、返して。
そんなやり取りと疎遠になりすぎて、怖かったのだ。
今さら誰かを愛するなんて、無理だと決め付けていた。
バニーちゃんは、それを乗り越えようとしているのに。
もう1度手を伸ばそうとしてくれたのに。
あんな逃げ方は卑怯だったと、今になって後悔する。
ちゃんと向き合って、ちゃんと話すべきだった。
私にとってバニーちゃんは、とても大切な子なのに。

大切な大切な、

「友人…?」

確かめるように呟いて、何かが違う気がした。

「仕事仲間、会社の後輩」

様々なレッテルを思い浮かべてみるけど、しっくりくるものはなくて。

「大切な、なんだっけ…」

独り言ちて、バニーちゃんの顔を脳裏に思い浮かべてみて。
それは、告白の時の切なげな、泣きだしそうな。
でも決然とした表情で。
きゅう、と胸が締め付けられた。

「ま、さか…ね」

そんな、そんなことって。
ありえない、違う。
全力で否定しようとするのに、心は騒ぐ。

「…バニーちゃんのことが、好き?」

口に出してみて、ようやく分かることがある。

大切な、仲間だった。
ちょっと自信家で生意気で、クールな子。
そんな印象だったけど。
でも、それだけじゃないことも知っている。
本当は淋しがり屋で臆病で、愛に飢えていて。
不器用で優しくて、でもどうしていいか分からなくて拒絶して。
独りで頑張ろうと虚勢を張る、とても孤独な子。
いつも、いつだって私は彼を見ていたのだ。
幸せを、祈っていたのだ。

「…私でも、隣りに立てるかな」

呟きは、闇夜の中に消えた。


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