甘い永遠を願った[7]
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「ぁあああっ、あ、はぅん、っン、ぅ……っ」
「は……っ、ぁ……ナマエさ……っ」

同時に上がった互いの喘ぎ声は、その後、それぞれの咥内に消える。
秋山はがむしゃらにナマエの唇を貪りながら、腰を突き上げた。
もうここまで来てはナマエの中で達すること以外に選択肢はなく、また乞われた以上はナマエのことも最後まで気持ち良くしてあげたい。
しかし、中の刺激だけでナマエに絶頂を迎えさせようとすれば、その動きはかなり激しいものになり、更なる負担を強いるだろう。
秋山は右手をナマエの腰から離し、触れ合う互いの下半身の間に滑り込ませた。
手探りでナマエの秘部を掻き分け、見つけ出した突起に指先を擦り付ける。

「ひああああっ、あっ、あ……っ、そこ、いっしょ、に、しちゃ……っ」

恐らく急激に増したであろう快感に、ナマエが悲鳴を上げた。
これまで以上にきつく中を締め付けられ、秋山も喉の奥で呻く。
あっという間に限界が見えた。

「ナマエさん……っ、いい、すごく、ーーッ、」
「あ、あ、ぁああっ、やっ、ひも、り……っ」
「ーーっ、いけそう、ですか……っ?」
「ん、ん……っ、いく、いっちゃ、ぁ……ッ」

快楽に呑まれ、涙を流しながら必死で頷くナマエの姿に、秋山の欲望は燃えそうなほど熱く滾る。
今にも弾けんとする熱芯を深々と押し込み、濡れそぼった突起を指先で挟み込むように刺激しながら、秋山はナマエの身体を強く抱き締めた。

「ナマエさん……っ、一緒に……!」
「あ、あ……っ、ひもりっ、や、ぁ……っ、いく……っ、きちゃう……っ、ぅ、あ……っ、あああっ!」
「ーーッ、く、ぅ……っ、」

熱芯が、一際大きく脈打つ。
互いの絶頂はほぼ同時に訪れた。
一瞬早く達したナマエに屹立を締め付けられ、耐えられるはずもなく秋山もまた欲望を解放する。
失神しそうなほど激しいオーガズムに、二人は互いの身体を抱き締め合ったまま全身を震わせた。
全ての筋肉が硬直し、そしてゆっくりと痺れるように弛緩していく。
全力疾走の直後のような動悸に呼吸を荒げたまま秋山が何とかナマエの肩から顔を上げた時、ナマエはまだ絶頂の余韻に身体を震わせていた。
後頭部に回した手で柔らかく髪を掻き混ぜ、もう一方の手で背中を撫で摩る。
やがて脱力したナマエが、ぐったりと秋山に凭れ掛かった。
スパンの短い呼気が秋山の耳元を擽る。

「……大丈夫ですか?」

秋山がナマエの身体を抱え直そうと手の位置を変えると、その刺激だけでナマエが鼻から抜けるような声を漏らした。
ぞくりと肌が粟立ち、秋山はそこで、自らの欲望が全く硬度を落とすことなく屹立したままであることに気付く。
感覚的に、精はかなり大量に吐き出したようだったが、どうやら下半身は満足してくれなかった。
秋山は、ナマエに対してのみ絶倫な己の性欲を疾うに自覚しているので今更驚きはしないが、それにしても今日ばかりはもう少し大人しくしておいてほしかったと嘆かわしく思う。
いや、今日だからこそ、一回では到底足りないのだろう。
単純に一ヶ月半ぶりという期間もさることながら、今回は込めた想いが一層特別だった。
二度と抱かせては貰えないかもしれないと諦めかけていた最愛の恋人を、この手に抱けたのだ。
一度で満足しろと言う方が無茶である。
だが秋山は、事前に立てた誓いを忘れてはいかなったし、当然破るつもりも毛頭なかった。
今日はもうここまでだ。
これでも充分に無理をさせてしまったのに、二回目に付き合わせるわけにはいかなかった。

「抜きますね」

秋山はナマエに声を掛け、もっとと泣き喚く欲望を黙殺して腰を引く。
その過程でもまたナマエが可愛らしく喘ぎ、熱く濡れた襞が離したくないと絡み付いてくるものだから、秋山は懊悩に頭を抱えたくなった。
どうして今日に限ってこんなにも反応が良すぎるのだろうか。
しかしナマエの常より敏感な身体もまた、秋山と同様に今日だからなのだろう。
ナマエも、この行為を望んでくれていた。
久しぶりに秋山に抱かれた身体は、無茶をさせてしまったけれど、きっと悦んでくれている。
秋山は、挿れる前と殆ど変わらない程に芯を残した熱を見下ろし、零しかけた溜息を飲み込んだ。
避妊具を外す際の摩擦さえ刺激になりかねない勃ち方に辟易としながら、秋山は片手で事務的に後始末をする。
不本意にも拾ってしまった快楽については、丸ごと無視をした。

「ナマエさん?本当に大丈夫ですか?」

側に落ちていた自身のシャツで手を拭ってから、ナマエの髪を丁寧に掻き上げてその表情を窺う。
伏せられた瞼が開いた先、現れたのは未だ快楽に蕩けきった瞳で、秋山はその色気に息を飲んだ。
オーガズムの余韻を引き摺るにしては、長すぎる。
久しぶりの行為で、絶頂から身体が降りられないのだろうか。
秋山はナマエの身体を抱きかかえ、そっとベッドに横たえた。
脇腹の怪我が上になるように横を向かせ、秋山も向かい合う形でその隣に寝転ぶ。
そのまま抱き込むようにナマエの身体に腕を回して、至近距離に迫った唇にキスを落とした。
何度か啄ばみ、そっと宥めるように唇を舌で愛撫する。
同時に、汗ばんだ背中を優しく撫でた。
穏やかな接触に、愛おしさが込み上げる。
しばらく続けていると、ナマエが誘うように唇を開いたので、秋山は口付けの位置を頬に変えた。
不満げに尖った唇は大層可愛らしいが、これはあくまでナマエを快楽の頂点からゆっくりと降ろしてあげるための行為であり、再燃させるためのものではないのだ。
しかし、秋山が謝罪の意味も込めて指先でナマエの唇をなぞると、思わぬ反撃に遭った。
ナマエが、秋山の指先を甘噛みしたのだ。

「ちょっと、ナマエさん……」

思わず情けない声が出た。
その積極的な甘え方が嬉しくないわけではない。
だが今この瞬間に限って言えば、興奮を煽られることほど都合の悪いものはないのだ。

「ふふ、ごめん」

少し落ち着いたのか、秋山の意図を察したらしいナマエが、ようやく言葉を返してくれた。

「大丈夫ですか?」
「うん。なんか、ずっとふわふわしてて」
「どこも痛くはない?」
「それは平気。気持ち良かった」

素直すぎるナマエに、今度こそ秋山は撃沈する。
言葉を取り戻してくれたことは助かるが、その一方で、頼むから黙ってくれと理不尽なことを言いたくなった。
この調子で秋山の悦ぶことばかり言われては、いつ劣情が暴走するか分かったものではない。
それでも、まだどこか不安定なナマエのために、秋山はしっとりと濡れた肌のあちこちにキスを贈った。
呼吸に混ぜて、喉の奥から気持ち良さそうな声を上げるナマエは、目を閉じて秋山の慰撫を受け止めている。
その度に震えて反応する自らの下肢については、見たくもなかった。
恐らく先走りを垂れ流して酷い有り様だろうということは、容易に想定出来る。
昨日のうちに抜いておくべきだったと、今だから考えられる不毛かつ下劣な後悔をしながら、秋山はナマエの髪を撫でた。

「……こういうの、初めてだね」

不意に瞼を持ち上げたナマエが、そう言って秋山の顔を覗き込む。
意味を即座に理解し、秋山は同意した。
秋山がナマエと肌を重ねる時、基本的に一度で済ませることは殆どない。
最低でも二回以上、は、主に秋山のせいで二人の中では決定事項だった。
そして、多い時は五回、六回と続く。
そうなると、終わる頃には互いに体力精力共に限界で、特にナマエはいつも殆ど気絶と変わらない状態で眠りに落ちた。
当然、一方が気を失っていては本番の後の後戯が成立するはずもない。
反対に、回数が少ない時は相応の理由、つまり翌日の出勤時間が早いだとか、共に元々疲労困憊の状態だったとか、そういった訳があるのだ。
そうなるとやはり、後戯よりも睡眠を優先してしまう。
秋山としては物足りず、眠るナマエを隣で眺めながら一方的だとしても触れたくなることは多いのだが、まさかナマエの貴重な睡眠時間をそれ以上邪魔するわけにもいかず、いつも我慢していた。
だからこんな風に、終わった後もずっと手放すことなく抱き締めて触れ続けていられることは、堪らなく幸せだと思う。
現状に関して言えば確かにとんでもない我慢をしているのだが、それとはまた別のところで、純粋にこの穏やかな触れ合いを心地好く感じていた。



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