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‡ S t o r y ‡

Act,2 『大剣の精霊 -セイドスロードの願い-』

フォーラス王国王立闘技場、王国関係者特別観覧席前―――

先程の出来事からは一変し、闘技場の廊下はシーンと静まり返っていた。
美しいアメジストブルーをした大剣の丁度真上に姿を現した物体にウェルヴは疎(おろ)かイルグスやミトが揃いも揃って動揺し、開いた口を塞ぐ事が出来なかったからだ。
それはそうなのかも知れない。
相手方は半透明で足が一切見えず、何やらキラキラと目映(まばゆ)い光を出している。
しかも、それが宙にフワフワと浮いているものだから不思議さと奇妙さが倍増した。
この件はウェルヴにとって、聖獣と人の合いの子、イルグスに出会った時以来の衝撃となる。
一体どうなっているのか、はっきりと理解出来る説明が欲しい。
でなければ、直ぐ目の前で起こっている現象を夢や幻として処理してしまいそうになる。
大体、身体が透けて見えるとはどういった原理でそうなっているのか?
全く以って理解不能だ…。
固唾を飲み込んでマジマジと眺めてはいるウェルヴだが、頭の中は真っ白で思考回路も停止寸前だった。
けれど、ずっとそんな調子では話がちっとも前に進まない。
ウェルヴは思い切り頭を振って、現実と向き合う決心をする。

「ねっ、ねぇ、一つ聞いても良いかしら?この状況って…一体何なの?」

ウェルヴが大剣の上に浮いている物体から目を離さずに、小さな声で獣化したままのイルグスに聞いた。
問われたイルグスはウェルヴ同様、目を動かす事なく只々一点だけを見つめている。
驚きのあまり、ウェルヴに問われても何も答えられず仕舞いでいた。
錯覚だろうか?と思い、何度も瞬きをしては目を擦る。
だが、状況は全く変わりそうにもなかった。
これがもし、この世に未練の有る幽霊の類(たぐ)いなのだとすれば、瞬きをしている間に消えて失くなっている事だろう。
だが今、三人の目の前に居る物体は確かに存在している。
だからこそ、混乱しているのだ。

「ねぇ、ちょっと、イルグス。
黙っていないで一体どうなっているのかを早く説明なさい!」
「すっ、すみません。ですが、ウェルヴ姫…、おれの首締めてます!
くっ、苦しいです…っ!」

首をギリギリと締め付けられたイルグスは痛さと苦しさを我慢出来ず、咄嗟に人型へ戻りウェルヴの両手から素早く抜け出した。
首を摩りながら涙目でゲホゴホッ!と大袈裟に咳をしたイルグスは次に、諸悪の根源であるミトをビシィッ!と指差す。

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