「 7 」

 その時。
 彼の目が、愉快そうに細められた。

「おや、ぼくのバリアが破壊されてしまったようだ。キーファ、怒ってるみたいだね」

 続いて、「ライラを離せー!」という叫び声とともにこちらに突撃してくるキーファ。愛すべき夫。すでに満身創痍の身体を無理やり動かしながら、なりふり構わず私の方へと走ってくる。

 私も叫ぶ。
「来ちゃだめ! 逃げて! キーファ! この人、あなたを――」

 言い終わる前に、彼は私たちの前に着いてしまった。
 うおおおという叫び声とともに、私とアルスさんの間に剣が振り下ろされる。

 アルスさんは。
 ニッコリと微笑んで。
 キーファの渾身の一撃をさらっと避ける。
 軽い動作で、振り下ろされた刀身に飛び乗り、そのままキーファの肩に手を載せた。
 花が綻ぶように、
 優しげに、しかし狂気に満ちた笑みを咲かせた彼は、そのまま親友の両頬に手をのせた。

「覚えているかい? 神殿で、きみは『アルス、とことんオレにつきあってくれるよな?』って言ったよね? ぼくは約束を守った。だから、今度はきみの番だ、キーファ」
 名実共に、今からきみはぼくのものだよ、キーファ。



 8年前の私の記憶のままの、無邪気で幼げな笑顔の彼が、そこにいた。



end

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