「 3 」

 私の後ろで観戦しているユバールの民たちが口々に言う。「あんな細っちょろい棒切れなんざ、うちのキーファの巨大な剣の前では小枝同然だ」「今までちょこまかと逃げ回っていたが、これで勝負はついたな。あんな細い真っ向勝負してキーファに勝とうなんざ最初から無理だったんだ」

 逃げ回っていた?

 いや、ちがう。

 みんな勘違いしている。

 今までの戦いや、完全にキーファの刀筋を読んでいるあたりから、キーファとアルスさんとの実力の差は圧倒的だった。これは、確実だ。だから彼は逃げ回る必要はないはずだ。

 あれは。

 ――アルスさんは、自分に向かってくるキーファを、慈しんでいたんだわ。

 きっと、自分に向かって来てくれることが、嬉しくて仕方がないんだわ。
 今まで何年間もキーファを探し続けていた。やっと会えて、しかも、キーファが自分に向かって来てくれている。
 戦ったら。もし自分がちょっとでも手を出してしまったら、すぐにこの幸せな時間は終わってしまう。
 だから、なるべく長引かせるために、彼は敢えて『逃げ回る』ことにより、キーファをずっと見ていたのだ。

 ――私のその読みが正しければ。

 アルスさんが剣を取った時点で、もう……





 砂埃がやんでゆく。


 徐々にクリアになる視界。



 そこで私たちが見たものは。





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