「 2 」

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裕也視点
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 ナルトと帰るときは、毎回人通りの少ない道にしてもらっている。
 彼が里人たちから石を投げられるのが見ていられないからだ。
 彼が一人の時(おれといないとき)も人通りのない道を歩け、と頼んでいるが、多分聞き入れてもらえていないだろう。彼は里人たちの怒りの矛先を自ら進んで受けているように思われる節がある。自己犠牲の強い男だ。
 
 夕焼けの中、人のいない道を歩く。
 悪戯などの自分の武勇伝を嬉しそうに語るナルトの話を、笑顔で聞きながら歩く。

「そんでな! そんでな! おれってばお色気の術で火影のじっちゃん気絶させてやったんだってばよ! イルカ先生も鼻血出して倒れちまったし、やっぱりおれ才能あるんだな!」
「そうだね〜」
「苦手な影分身の術だって、シンポはあるんだってばよ! そのうち、クラスの誰よりも多く分身出して、皆を見返してやるんだってば!」
「うんうん」
 ここで、突然、空気が冷たくなる。感情の死んだ抑揚の無い声。
「ところでお前いい加減にしろよ、おれはすげぇ迷惑被ってんだけど。ちょっと手元が狂ってクラスメイト殺しそう

 急に変わった声音と口調。一気に氷点下になった。彼の纏う空気もガラッと変わる。
『切り替わった』のだ。
 いつも何の前触れもなく切り替わるから、最初はびっくりしたけど、もう慣れた。
 彼の顔を見ると、さっきまで嬉しそうに笑顔で武勇伝を話していたのに、今は無表情だ。普段は馬鹿そうな笑いに覆い隠されていて気付かないが、とても綺麗な顔立ち。
 さっき突然素に切り替わったのは、きっと、完全に人の気配が無くなったからだろう。さっきまでも人はいなかった(ようにオレは思えた)が、おそらく、おれは気付けなくてナルトだけが気付けた人間がいたのだ。ナルトは、絶対に、素の自分を誰かに目撃されてはいけない。

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