「 無力な俺 」
里人の仕業で、ある日、ナルトの部屋が崩壊した。
夕焼けのなか、2人一緒の帰路の途中、
ふと、ナルトが素に戻って「今おれの部屋に3人の気配を感じる。これは、よくうずまきナルトに暴行している連中だ」と呟いていた。
だから何か盗まれるんじゃないかと内心不安だった裕也は、この10分後に、己の考えが甘かったことを知る。
彼の留守中(アカデミーにいる間)に起こった事件で、ナルトと裕也が帰宅したときにはもうボロボロの状態になっていた。
ガラスの無い窓から差し込む夕陽により、部屋全体が燃えるような赤色に染まっている。
窓はすべて割られ、床にはガラスの破片が飛び散り、家具はめちゃくちゃ、シーツや衣類なども全部引き裂かれていた。壁には『化け物』『死ね』などの罵詈雑言が書かれている。土足で何人かが押し入ったようで、床は靴痕や泥とガラスの破片でまみれている。今立ち入ったら怪我をすることは確実だ。
あまりの惨状に言葉を失う裕也。呆然と部屋を見詰める。
一方ナルトは慣れているようで、鼻で笑った。
「ハッ、毎度毎度ご苦労なこった」
そう言って、また外へ出て行った。
ようやく我に返った裕也は、あわててナルトを追う。
「おい、うずまき。どこに行くんだ」
歩みを止めぬまま彼は答えた。「決まっているだろう。里人らの目の付くところさ」
「なんのために? あんたはまた傷付きに行くのか?」
「『部屋が荒らされて凹んでいるうずまきナルト』を演出しないといけないんだ。意気消沈しているところを見せて、奴らにうずまきナルトを傷つけられたという達成感を与えないといけない。」
ぎろり、と裕也を睨む。「だからお前は付いてくるな、内海。お前まで殴られるぞ」
いつも笑みを携えている裕也は、笑っていなかった。
「そんなの関係ない。おれがそいつらをぶん殴ってくるから」
「あいつらを挑発する行為はよせ。逆効果だ」
「あんたに向けられる憎悪をおれにも分けて欲しい。」裕也はナルトの腕を掴んだ。真摯な目。夕焼けに照らされ、赤く光る双眸。「一人で抱え込むな、うずまき。頼むから、守らせてくれ。あんたがあいつらのところに自分から行ってしまうのなら、守りたくても守れない」
途端、ナルトの裕也を見る目が一気に冷えた。
底冷えするような嘲笑。「ハッ、おれを守るだって? 本気で言っているのか。お前みたいな弱い奴に何ができる? お前に守られるほどおれは弱くない」
そう言って、彼は瞬身の術で消えてしまった。
彼がいつその印を組んだのか、裕也には見えなかった。彼の腕を掴んでいた右手がからまわる。「それでもおれはあんたを守りたい、」そう言おうと思った時にはもうナルトはいなかった。止められなかった。力の差は歴然だった。
――おれは、弱い。
ちからがないと、おれは子ども一人守れない。
無力さに唇を噛んだ。
夕焼けのなか、2人一緒の帰路の途中、
ふと、ナルトが素に戻って「今おれの部屋に3人の気配を感じる。これは、よくうずまきナルトに暴行している連中だ」と呟いていた。
だから何か盗まれるんじゃないかと内心不安だった裕也は、この10分後に、己の考えが甘かったことを知る。
彼の留守中(アカデミーにいる間)に起こった事件で、ナルトと裕也が帰宅したときにはもうボロボロの状態になっていた。
ガラスの無い窓から差し込む夕陽により、部屋全体が燃えるような赤色に染まっている。
窓はすべて割られ、床にはガラスの破片が飛び散り、家具はめちゃくちゃ、シーツや衣類なども全部引き裂かれていた。壁には『化け物』『死ね』などの罵詈雑言が書かれている。土足で何人かが押し入ったようで、床は靴痕や泥とガラスの破片でまみれている。今立ち入ったら怪我をすることは確実だ。
あまりの惨状に言葉を失う裕也。呆然と部屋を見詰める。
一方ナルトは慣れているようで、鼻で笑った。
「ハッ、毎度毎度ご苦労なこった」
そう言って、また外へ出て行った。
ようやく我に返った裕也は、あわててナルトを追う。
「おい、うずまき。どこに行くんだ」
歩みを止めぬまま彼は答えた。「決まっているだろう。里人らの目の付くところさ」
「なんのために? あんたはまた傷付きに行くのか?」
「『部屋が荒らされて凹んでいるうずまきナルト』を演出しないといけないんだ。意気消沈しているところを見せて、奴らにうずまきナルトを傷つけられたという達成感を与えないといけない。」
ぎろり、と裕也を睨む。「だからお前は付いてくるな、内海。お前まで殴られるぞ」
いつも笑みを携えている裕也は、笑っていなかった。
「そんなの関係ない。おれがそいつらをぶん殴ってくるから」
「あいつらを挑発する行為はよせ。逆効果だ」
「あんたに向けられる憎悪をおれにも分けて欲しい。」裕也はナルトの腕を掴んだ。真摯な目。夕焼けに照らされ、赤く光る双眸。「一人で抱え込むな、うずまき。頼むから、守らせてくれ。あんたがあいつらのところに自分から行ってしまうのなら、守りたくても守れない」
途端、ナルトの裕也を見る目が一気に冷えた。
底冷えするような嘲笑。「ハッ、おれを守るだって? 本気で言っているのか。お前みたいな弱い奴に何ができる? お前に守られるほどおれは弱くない」
そう言って、彼は瞬身の術で消えてしまった。
彼がいつその印を組んだのか、裕也には見えなかった。彼の腕を掴んでいた右手がからまわる。「それでもおれはあんたを守りたい、」そう言おうと思った時にはもうナルトはいなかった。止められなかった。力の差は歴然だった。
――おれは、弱い。
ちからがないと、おれは子ども一人守れない。
無力さに唇を噛んだ。
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