「 11 」

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 気付いたら、自室にいた。
 ハッと目を覚ますと、視界には見慣れた天井。
 急いで飛び起きると、脚に激痛。「痛っ、」と唸りながら布団にまた倒れると、父親の声が飛んでくる。

「シカマル、お前、襲われたんだってな。ったく、気を付とけよって言っといただろうが」
 父、シカクは、部屋の窓辺に寄りかかり、こちらを見ていた。どうやら、目を覚ますまで見ていてくれたらしい。こんなに優しい親だっただろうか?
 しかし、今はそれどころじゃない。
「親父、あの子は? おれはどうやってここまで来た?」

 そう訊いておきながら、シカマルの優秀な頭脳は、その問いの答えを既に用意していた。
 でも、それを認めてしまうほど、彼の精神は強くなかった。

 しかしながら、父は、無情にも、彼の予想通りの答えを返す。
「えらいべっぴんさんに運ばれてきたんだよ。お前、本当に情けねぇな。あんな華奢な子に…。応急処置まできれいにされていたんだぞ。感謝しとけ」
「…ああ…やっぱり…そうか…」

 愕然とした。
 助けてもらい、守ってもらった上に、気絶したのを運んでもらったのか…。あんな細っちい腕で、運ばせてしまったのか…。
 ハァ…、と落胆のため息が出る。
 どうしてこんなに落ち込むのか分からないが、とにかく滅入った。これが他の奴だったらこんな気持ちになることは無かったのに。

 父は煙草の煙を吐いた。「お前を襲った連中は、火影様のところに運んだ。これからイビキあたりに尋問にかけられるだろう。拷問が趣味のイビキの尋問はキツイだろうな。あいつ通称"サディスト"だし」
「ああ、そう…」どうでもいい。

 しかし、この直後、父は信じられない言葉を吐いた。
「そして、その子も一緒に尋問室行きだ。」

 時が止まった。
 理解するのに時間がかかる。
 心が鉛のように重くなる。呼吸が苦しくなる。
 遠い意識の中で「助けてもらっといて、酷だがな…。」という声を聞く。

 そして、たっぷり間を開けてから、ようやく声が出た。
「……え?」

 父シカクはまた煙を吐いた。
「あの子は里の者じゃないからな。奈良家の当主として、身分不明の者を見過ごすわけにはいかない。だからそいつも連れて行った。」チラリとドアを見、ため息とともに灰皿に煙草を押し付けた。「…全く、お前は面倒臭がりの頭脳派だと思っていたんだけどな。やれやれ、その足でどこに行くんだか」

 真っ赤な夕焼けの光が差し込むその部屋に、
 もう主の姿は無かった。



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