「 第3話 彼を取り巻く環境 1 」

 元の世界に戻るまでは、俺がこいつのことを守ってやろうかな。
 そう考えるようになったのは、今日無理矢理『デート』に連れ出した後のこと。




第3話 彼を取り巻く環境






 お隣りのドアの前。
 『チャイムにはカメラとマイクが付いている』という裕也の常識を裏切り、チャイムしか無かった。しょぼい。
 ボタンを押すと、ピーンポーンという定番の音がした。すぐにドタドタと豪快な足音。

 裕也はいつもの軽薄な笑みを貼り付けた。間もなく玄関のドアが大きく開かれ、出て来たのは金髪碧眼の少年。
 瞬間、裕也に衝撃が走った。
 ――こいつ、
 金糸の少年は、(今の)裕也より6cmほど小さい。溌剌な印象を受ける、やや小麦色の肌。明るい空色の瞳。一番目を引く、両頬の3本の傷。フェイスペイントではないだろう。

 ――それに、この瞳は……。

 おれの目の前にいるコイツは、雰囲気こそ違えど、まんまあの夢のガキじゃないか…!


 一方、少年も裕也を凝視していた。裕也は風呂上がりで、だいたいは乾いているが、まだ前髪はやや濡れていた。その髪が額に貼り付き、毛先から雫がたれている。もともと甘くて色っぽい顔だったのが、いまはさらに艶っぽくなっている。えも言われぬ色香。
 どちらも無言で互いの顔を見詰めていたが、さきに少年の声がその沈黙を割った。


「どちらさまだってばよー?」


 コクン、と首を傾げる少年。
 まじまじと観察していた裕也はハッと我に還り、にっこりと微笑む。


「あんたの隣に越して来た、内海裕也。よろしくな、うずまき」

「あれ、俺の名前知ってるのか?」

「うん。姫さんに『ナルト君には手を出すな』って言われたときにね」


 笑顔の下で、裕也は冷静に少年の反応を観察していた。
 ナルト少年はキョトンとしていた。続いて「姫さんって誰だってば?」と聞いてくる。裕也は予想通りの反応に苦笑しながら、「うそ。表札に書いてあっただけだよ」と嘘をついた。


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