贖罪の紅
慈悲の碧
両目に埋めて


おいきなさい
神殺しの業を背負い
おいきなさい
宿命のままに
そうして漆黒の御霊に手をかけよ





始 ま り の 物 語





昔々のお話をしよう。
ある所に神様達がいました。
神様は神様でも人間を慈しみ、人間を助けようとする神様ではありません。
ただ見守り世界の運命を管理する者がいました。
その人たちは自らを神と呼びました。
一人の神様は一つの世界を管理していました。
神様達の力の差や好みによってそれぞれの世界は発展して行きました。
しかし、ほとんどすべてが神様の望んだ通りにはなりませんでした。
そこである神様が言いました。
『自らの“使者”となる者を創らないか』___と。
多くの神様がそれに賛成しました。
しかし、神様の声を聞く者を創るには特別な材料が必要になりました。
ある神様が『古の神様を使ったらどうか』と言いました。
古の神様は神様達が生まれて来るよりも前からいた存在です。
でも、神様達のように世界を管理するでもなく、ただいました。
ただ、存在しているだけでした。
それでも神様よりもずっと強い力を持っていました。
『それはいい』と神様達は嗤いました。
神様達は連れ立って古の神様のもとに行きました。
鏡を合わせたような姿をした容姿をもった男女の双子の神様でした。
突然現れた神様達は古の神様を騙して、双子の男の神様を連れて行ってしまいました。
騙されて連れて行かれた古の神様は、神様達に都合のいいように変えてしまいました。
こうして新しい神様が望んだ、自分の思い通りに動く人形を手に入れました。
人形は分けられてそれぞれの世界の輪廻の渦に流しました。
最初は本当に上手く行っていました。
新しい神様に従順な生き物が大地を覆いました。
しかし、それは本当に微かな時間でした。
“使者”は世界を壊し始めたのです。
新しい神様達は困りました。
『このままでは世界が死んでしまう』と。
原因は解っています。
騙して殺したあの古の神様のせいです。

『世界など、お前らなど、滅べばいい!』

そう呪いながら死にました。
その神様をもとに創った魂は世界の破壊者となってしまいました。
困り果てた神様達は残された古の神様のもとに行きました。
残された古の神様はもう一人をずっとずっと待っていました。
片割れの神様の帰りをずっとずっとずっと待っていました。
いつまでもいつまでも独りで待っていました。
そうしているうちに、新しい神様達がやってきました。
神様達の話を聞いて古の神様は怒りました。
堕ちてしまえば二度と戻れません。

『私は神殺しの神になり
 片割れを止めましょう
 私は時と空間を統べ
 どの世界へでも訪れましょう
 憶えておきなさい

 私 は 貴 方 達 を 許 さ な い 

紅と碧の瞳が神様達を睨みつけました。
古の神様は特別な体を創りました。
衰えることない肉体。
しなやかな四肢。
美しい容姿。
高い神力。
空間を渡る力。
そして、神を刈る力を。

『この肉体に入れば私の個はなくなるでしょう
 しかしこの憎しみを、使命を、忘れはしない
 私が辿りつく前に壊れないといいわね』

古の神様は嗤いました。
古の神様はそうして旅に出ました。
長い長い旅でした。
今もまだ旅をしているのことでしょう。





fin


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