没ネタ@ひととせ2




 今年も後二日ばかり残すばかりの今日、黄瀬の付き添いもといお目付役として笠松が同行して病院へと来ていた。海常を勝たせるためと無理を重ねた黄瀬の膝は故障してしまい、誠凛との試合があった日に軽く診てもらい翌日の四位決定戦にベンチから応援の為に先延ばし、本日と相成った。何かと無茶しがちの黄瀬のストッパーとして笠松が引っ張り出された。監督の財布からいくらか出して貰ったので、笠松は黄瀬が一人暮らしをしているマンションまで向かった。
 黄瀬のマンション前の花壇に所在無さげに座っている奴の姿を見つけた笠松の目がきりりと釣り上がった。黄瀬は笠松が足早に近付いて来るのを気付き、にへらと締まりなく笑う。それがさらに笠松を苛立たせた。なに呑気なんだコイツ。

「センパ〜イ」
「この馬鹿! 俺が電話するまで部屋にいろって言っただろう!? 今は冬なんだからいくら馬鹿とはいえ風邪ひくじゃねーか!」
「う、次から気をつけるっス。つーか、バカって言った方がバカなんスから!!」
「子供か」

 あんまりにもなさけない黄瀬の切り返しに、ようやくクールダウンした笠松の視線は右足に向かう。黄瀬の足はスウェットに包まれていて包帯や湿布の有無は服越しから分からないが、時折遊びに行く時のおしゃれで身体にぴったりと沿ったものではないので、黄瀬なりに気を配っているのが伺えた。

「歩けなそうか?」
「大丈夫ッスよ」
「怪我を甘くみんなよ」

 笠松はそう釘を刺してから交通量が多い表通りまで出てタクシーを拾う。いつもなら賑やかな黄瀬も珍しく口を閉ざして、笠松の後について行った。笠松もそう口数が多いタイプではないので、自然と沈黙が降りる。どちらも不安なのだろう。黄瀬の足がどうなるのか分からなくて、バスケが続けられるのか、それとも____。誤摩化すように喋っても空回ることが想像に容易い。いっそ痛々しくなるだろう。だからどちらも、黙る。
 タクシーの運転手に県立病院を告げて、互いに車窓の移り行く景色に視線を投げた。街路樹はとうに葉を落とし、寒々く枝を空に広げている。薄ぼんやりと広がった雲が太陽の熱を遮って寒さが這いよる。歩いている人は分厚いコートに身を包んで、寒そうに首を窄めながら急ぎ足に歩き、目的地に急ぐ。バスケットボールを追いかけている内にすっかりと街は冬へと移り変わっていたのに気付かされた。
 道は結構空いていたので、渋滞に捕まる事なく病院につく。











没理由
・普通、主将がついていかないだろう
・足の怪我人をわざわざ一人暮らしの家に返すか
・保護者がついてくるのが普通では
・つづきが書ける気がしない


掲 載 140226
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