灰色sss

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Robin ーアレン独白ー



美しい歌声が人気のないマーテルに響く。
悲しいぐらい優しい子守唄。
僕はそっと目を伏せた。
永遠に出口のない『もしも』を創っては、懺悔をする。
もしも、AKUMAがいなかったら。
もしも、グゾルがもっと若かったら。
もしも、ララの中のイノセンスがもっと別の所に入っていたら。
こんな悲しい歌をララは歌わなくてすんだのかもしれない。
悲しく、優しい子守唄が染み込む。
優しいのにとても重たい。
きっと彼らはもっと生きていたかっただろう。
何処で歯車は狂った?
疑問に答える者は誰もいない。
今までのララはちゃんと“人”だった。
今のララは“ただの人形”。
もう、戻らない。

050623 下書き

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人魚姫の唄

少し高めのテノールが夜の森に優しく響く。
どこか、悲しげな音。
そして聞き覚えのある声。
発生源は俺の近くか……
あぁ、やはりモヤシーーーアレン・ウォーカーか。
俺に気付く様子もなかった。
いや、俺に気付かないフリをしていた。
そいつは偽善的に優しく、何処までも愚かしく、そして拒絶をしている。

オマエは悲しいのか?
オマエは寂しいのか?
オマエは……泣いているのか?

大気を揺らさない言葉に返答など返るはずもない。
当たりまえだ。
俺には関係がないのだ。
言い聞かせるように、足早に俺はそこから去った。

050703 下書き

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変わらない空

「俺さぁ……」
「…………何だ」

煩わしいという顔をしても、ユウはちゃんとこっちを見てくれる。
その一つ一つが嬉しい。
闇色の髪がさらりと揺れる。
陶磁器人形のような奇麗な肌。
そう、出逢った頃と変わらない。

「ラビ、何だと聞いているんだが?」
「俺達が出逢った頃の空ってさぁ、こんな感じだったよなぁー」

ユウは眩しそうに空を見上げた。
今、記憶を辿っているんだろうさ。
“君”にとって何でもない事も、俺は覚えている。
きっと一生、“君”の温かさ、声、顔、一緒に過ごした思い出。
ユウに関する事は全部忘れない。

「……そうかもな」
「え?」

立ち去るユウは一瞬だけ振り返った。
小さく微笑んでいる。
出逢ったあの日。
俺さ、ユウを怒らせちゃったよな。
でもさ、本当はユウに笑って欲しかったんだ。
道化みたいに演じてみたりもしたな。
今日と変わらない澄み渡った空の下だった。
初めて笑ってくれた時も同じ空。

「早くしろ、ラビ」
「アイアイさ〜!」

050703 下書き

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十二時になれば神田は僕の部屋に来る。
埋められない寂しさの代わり。
ノック音が響く。
神田が来た。
鍵の掛かっていない戸がゆっくり開かれる。
言葉を交じわす事もなく褥へ。
優しく唇を合わせれば、緩やかに答えた。
神田の瞳には『僕』は映らない。
瞳の奥で『僕』は『彼』に置き換えられる。

偽 り の 熱 で も い い
僕 を 求 め て

神田に求められるなら。
一時でも一緒にいられるならば。
僕はそれでいい。
そう、この僕らのひどく歪んだ関係でもーーー

050708
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疑似世界

「俺さぁ、時々思うんさ〜」
「何をですか?」

どっかの誰かさんと違って、アレンは俺の話に乗ってきた。
人懐っこいヤツだと思う。
そして、苦みを知らぬように笑う。

「ほんとはこんな世界は嘘っぱちなんじゃないかなって思うんさ」
「……うそ…………?」

不思議そうに小首をかしげた。

「本当は、この世界は誰かの夢なのかもしれないさぁ」
「ラビは意外とロマンチストなんですか?」
「さぁ?」

それでもここにいるしかないんだ。

050712下書き

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