一周年記念 その十七
虚ろで何もない日々。
ソレが僕の日常だった。
イギリスにいたころは、ただただ勉強をするばかりで、他人行儀な形ばかりの家族と、職務に忠実で冷たいく使用人に囲まれていた。
何処かよそよそしく、寂しい場所。
それは日本に来て、一人暮しをしてからも変わらなかった。
大して他者と付き合った事のない僕にはどうすればいいか分からなかった。
分からないまま、時間は消費されていった。
転機はあの本だ。
いつの間にかウチにあった奇妙な本。
『タブレット』。
僕はソレを手に取って、ただ文字を読み上げただけだった。
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く
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き
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険
の
は
じ
ま
り
で
あ
っ
た
本から幾重もの光が軌跡を描き、消えた。
呆然と僕はソレを見送って、数分後。
嵐はやって来ることを、この時は知るよしもなかった。
下書き 110827
掲 載 110827
再掲載 111218
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