一周年記念 その十三




「うむ、猿、何かに化けろ」

「は?」


貧しい村からとある社___稲荷神社に転がり込んで随分経った頃のことだ。

稲荷の主の友人___榎木津の龍神(僕はエノさんと呼んでいる)が、変な事を宣った。

僕はいわゆる妖というこの世の者ではない者を見る力がある。

神社の主___京極堂にしてもその正体は妖狐であり、エノさんは海辺の大きな街にその社がある神様だ。

かく言う僕は人だ。

ちょっとだけ彼らが視えるただの人。


「エノさん、無理だよ」

「狐も化けられるのだから、猿も出来るだろう」

「何だよそれ…………」

「つまらないぞーーーーー!!!」


整っている美しい顔を童の様に膨らませて、ジタバタと寝転がった。

これでも、神様らしい。

京極堂が手にしていた本を閉じて、溜め息をついた。


「エノさん、西の方で祭りをやるが行くかい?」

「!行くぞ、京極堂!!猿も準備しろ!!!」


ガバッと起き出して、エノさんは飛び出した。


「ほら、早くしろ!!」

「エノさん、祭りは日暮れからだよ」


はしゃぐエノさんに、再び溜め息をついていた。

そうして、京極堂は僕の方を見遣った。

その暗い瞳にいつでも僕は緊張する。


「ほら、行くよ、関口君」

「……う、うん」





Cry for the moon






「ところで、どうやって西の方に行こうか」

「水脈で決定だ!」

「……(京極堂達に不可能なことってあるんだろうか?)」




下書き 110822
掲 載 110823
再掲載 111218
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