一周年記念 その八




ココはふらりとグルメホーチューンから出掛けて、クローズドフォレストに出掛けた。

目的としていたグッドリアの実も手に入り、後は帰路につくだけだった。

キースが降りられそうな場所を探していると、ココはとある物を見つけた。


「これは………シェネルピーチか!」


シェネルピーチとは、加熱されると蠱惑的な桃の香りと深く芳醇な甘味が広がる果物で、完全に身が熟すのが実をもいでから僅か一日と、取り扱いの難しい食材の一つだ。

だからこそ、料理人にして想い人の彼___小松君に食べさせたいと思ってしまう。

中々食べる機会が有るわけもなく、持って行ったらと考えるだけで口元に笑みが浮かんだ。

きっと、いや確実に、シェネルピーチを持って行ったら、目を輝かせて、すごく嬉しそうに笑ってくれるだろう。

何を作るか考え出して、楽しそうに料理に取り掛かるに違いない。

それで出してくれて、『どうですか?』って少し心配そうな面持ちでココの顔を見上げる。

美味しいと反せば、小松はすごく和かな顔で笑ってくれる。


「………会いたいなぁ」

「カー!」


エンペラークローのキースが、勧める様に鳴いた。

傷まない様に細心の注意を払いながら、手製のケワタヒツジの籠に出来るだけ詰める。

ケワタヒツジは多くのヒツジと異なり、毛の密度が十五倍以上あり、ありとあらゆる衝撃を吸収する能力が優れている。

しかし個体数自体も少なく、繁殖能力も低い。

IGOでクローンを作って見たものの、天然には劣っていたようだ。

確りと詰めて、空に舞い上がった。

キースに最速を保って貰いつつ、懐から携帯電話を取り出し、電話を掛けた。


『はい、もしもし』

「久しぶり、小松君。

 前回のハント以来だね」

『ココさん!?お久しぶりです!ココさんも元気そうで良かったです』

「君も変わり無さそうだね」

『ハイ!』


小動物のような細々した動きが、ありありとココの脳内で像を結ぶ。

今、目の前で見えなかったのを少しだけ残念に思った。


「実は今、クローズドフォレストに来ていてね、シェネルピーチが採れたんだけど、調理を頼んでいいかな?」

『シェネルピーチですか?』

「三時間後くらいには着くんだけど、無理だったかな?」


少しココは声のトーンを落としながら尋ねた。

ココの予測通り、大丈夫です!と慌てて応えた。

後はいくつか言葉をまじわせて、静寂が流れた。


「あぁ、早く会いたい………」


再びココの唇から零れた。





Never put off till tomorrow   
what can be done today






「ココさーーん!シェネルピーチを使ってフルーツタルトを作ってみました!」

「じゃあ、いただくよ」

「ハイ!」

「ん、おいしい!!」

「喜んでいただけて良かったです」



下書き 110814
掲 載 110818
再掲載 111218
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