僕の隣には兄さん
兄さんの隣には僕
これだけが僕らの世界のすべてだった
これだけで世界は完結していた
…………彼らが来るまでは
【 狂 愛 萌 芽 】 side 炎
双子___特に一卵性双生児は互いに科学的には言い表せない特別な繋がりを、聞いたことがある。
僕と兄さん___レッドは全く同一の姿ではない(二卵性双生児だから)ので、これには本当は当てはまらないのかもしれない。
確かに僕が怪我したところを心配はするけど、痛みが伝わるわけじゃない。
逆もそう、同じだ。
でもきっと、心は引けを取らないくらい、近しい。
口数が少ない兄さんの言いたいことを僕はいつだって解った。
兄さんが好きなモノ、兄さんの悲しみも、兄さんがよく解っていない所も僕は兄さん自身より理解していると思う。
逆に兄さんも、僕が強がったり寂しさを理解してくれて、寄り添い慰めてくれる。
ただ手を繋ぎ、その温かさを分け合うだけで、僕は満足していた。
これが、僕の世界の全てだった。
赤子が眠る羊水の様な穏やかな世界は、破られ、産声をあげた。
破ったのは僕らの隣に引っ越して来た、グリーンとリーフという兄弟だった。
世話焼きなグリーンと、ちょっとひねているものの優しいリーフ。
二人の乱入者によって二人だけの空間を失った。
兄さんの隣にはグリーンがいて、兄さんはグリーンに連れられて行く。
取 ら れ る 。
兄さんが取られてしまう。
兄さんは、兄さんは、嫌じゃないんだね……。
僕は、嫌だよ。
僕は兄さんの一番でいたいのに、そうじゃないんでしょう?
兄さんは___レッドはグリーンが好きなんでしょう?
僕や母さんよりも。
今はまだ気付いてないみたいだけど。
僕は兄さんが好き。
誰よりも、何よりも。
グリーンやリーフにだって奪われたくない!
僕は、兄さんを愛している。
逃げられない様に絡めとり、籠に閉じ込めてしまいたい。
足を奪い、首輪を付けて、その瞳に僕以外の何一つも映らない様にしたい。
僕は、兄さんを、手に入れる。
何の犠牲を払ってでも。
下書 111020
掲載 111119