この目さえ 光を知らなければ



服越しに温もりを感じた瞬間、僕は泣きそうになった。



僕は毒人間だ。
様々な毒に対して、どんな人物よりもその対抗性を有して、自らも毒を操る術を持っている。
そんな風になった後、次々と他者の言葉に傷付いた。

『毒を持っている人間になんか触りたくない』
『いや、そもそもソイツが採った物、食べるなんて無理だろ』

美食屋なんて、もうやれる訳なんかなかった。
でもそんなことより、他者と触れ合う事が、怖くなった。
何年も何年も極力、他人と関わることの無いように、触れることのないように気を配った。
そう過ごす内に、他人の温もりを僕は忘れていった。
寂しいなんて欠片も思わない、思うわけがない。
それを変えたのは小松君だった。
トリコ達のような古い知人ならいざ知らず、会って間もない時に、毒を有していることを知ってどれだけの人が触ろうとするだろうか。
単なる愚者か、本当に心優しい人か。
小松君は後者だった。
嬉しかった。
本当に、嬉しかったんだ。
優しくされる度に、もっと一緒にいたくなった。
笑い掛けられる度に、もっと話たくなった。


それから、嫌われるのが、とても怖かった。


それは暖かな世界を知った幼子が、知らなかったから過ごせた過酷な世界を厭うように。
怖れた。
でも、知らなければ良かったのだろうか?
今はまだ、答えはでない。


自作お題:coccoで10題(雲路の果て)より
110926 下書き
110928 掲載
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