名前を呼ぶだけで精一杯

在学中の乙男な黄瀬君×通常運転な笠松先輩


「ゆ、ゆ、ゆ!」

「……さっきからどうしたんだよおまえ」

「うぅぅぅ。だって」


なぜ黄瀬がこんなにゆっゆっ言っているのかと言うと、本人のせいである。

なんとかIH後付き合うこととなった二人。

付き合うといっても基本的にバスケが優先であるし、笠松には受験が、黄瀬にはモデルの仕事がある。

中々に恋人らしい雰囲気というものが足りていない、と黄瀬は考えていた。

硬派で初な笠松を考えれば肉体の関係は無理でも、もっと恋人らしい事がしたかったのだ。

で、提案したのは『二人っきりの時は名前で呼び合う』と言ったのも黄瀬だ。

それに対して、『じゃあ呼んでみろ』と言ったのが笠松。

黄瀬はいざ呼ばん!!と先ほどから冒頭のように奮闘していた。


(なんつーか……ばかわいいなぁ)


顔を真っ赤にして純情を見せている黄瀬を観察しながら笠松は笑みを噛み殺す。

笑っているのがバレたら面倒な感じに拗ねるからだ。


「セ、センパイが呼んでみせて下さいッス!!」

「あ? オマエが言い出したんだろ」

「だって〜」


犬ならばきゅ〜んと言って耳を足れ下げていたに違いない。

そんな幻視をした笠松が大きく溜め息を吐いた。


「りょーた」

「………………………………………え?」

「早く呼べよな、涼太」

「ッ〜〜〜〜〜〜!!!!」


にやりとニヒルに笑う笠松は全国屈指のPGの顔をしていた。

数少ない、笠松が黄瀬を振り回した瞬間でもあったとさ。




【好きすぎて死にそうな5つのお題】
シュッレーディンガーの猫様よりお題拝借。
掲載140305
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