何事もなく、当日。
イギリスのカントリーハウスは古い歴史の臭いがするんだ。
室内は間接照明で照らされ、細々と飾られた花や小物がとっても可愛い!
みんなが持ち寄ったお菓子もおいしいし楽しい!!
仮装は兄ちゃんとお揃いの天使にしたんだ!!
お菓子を物色しながら、会場を回ろうと思います!!
「イタリア君、こんばんは」
「日本!ブォナ セーラ!!」
「ハッピー・ハロウィンです」
「べ〜!ハッピー・ハロウィン!!」
賑やかなパーティーは人がとてもいっぱいなんだ!
その中で日本に会えてよかった〜!
「イタリア君の今年の仮装は天使ですか?とても似合っていますよ」
「うん!!日本は……オボーサン?」
「いえ、日本の妖怪で天狗です。この格好は山伏の格好なんです」
「へぇ、カッコいいね!」
日本の白地の衣装はとても印象的だ。
みんなの思い思いの格好って変わっていて、可愛くて、俺はすっごく好きだな。
一番会いたい人___ドイツの姿を探す。
ムキムキで結構背が高いからすぐに見つかった。
「ヴェー!ドイツー!!」
「イタリア!急に抱きついたら危ないだろう!!」
「ハッピーハロウィンなのであります!」
「全くオマエは……」
後からどーーーんと抱きついたら、怒られちゃった。
ふぅと溜め息をつきながらも、ドイツは優しく俺の頭を撫でる。
へへへ、手おっきくて、きもちいなぁ……。
「ドイツさん、ハッピーハロウィンです……その恰好はフランケンシュタインですか?」
「そうだ。日本、ハッピーハロウィン。日本の恰好は………」
追いついた日本も合流して賑やかだね!
世界各国のお菓子を食べながら、みんな仲良く過ごせるっていいよね!
「ヴェスト〜!カッコいいだろう!!」
「兄さん!後ろから抱きつくのは危ないだろ!」
「プロイセン兄ちゃんは何の恰好〜?」
「ケセセセ、アンドロマリウスっていう悪魔だぜ」
俺様カッコいー!と笑うプロイセン兄ちゃんは通常運転であります。
カッチリと着込んだ服装は近代の貴族で流行ったロココスタイルで黒を主体にしたコーディネートだ。
当時の貴族と違うのは腕にまとわりついている蛇がとても異質に感じる。
曰く、ソロモン王の軍団の一柱だとかなんだとか。
よく分かんないけど、兄ちゃんが嬉しそうだから良いんじゃないかな。
「ハッピー・ハロウィン」
「ひぃ!い、イギリスだーーー!!」
「イギリスさん、ハッピー・ハロウィン」
「イギリス、ハッピー・ハロウィン……イタリア、隠れてないで挨拶しろ」
「は、はっぴー・はろうぃんであります」
もう条件反射の勢いで、イギリスからドイツの後に隠れたちゃった。
昔の大航海時代のイギリスのイメージが強過ぎて、うん……。
だって高笑いで刃物振り回してて、すっっっっっっっごく怖いんだもん。
「はぁ……そのまんまでいいから、ほら預かりものだ」
「え……えーと……ありが、と?」
イギリスがそっと手紙を差し出した。
柔らかな白い紙は日本のところのワシ?みたいな感じ。
手紙の封は蜜蝋で詰め草の葉っぱと花をモチーフにしたマーク。
かわいいなぁ。
「んと、ちょっと席外すね?」
「そうか、俺はオーストリアに呼ばれているからそっちの方に行く」
「そうですね、私もフランスさんやアメリカ君に冬の祭典についての話でもしましょうか」
「俺もドイツの方に後から合流するであります!!」
「くれぐれも他の人に迷惑をかけるなよ!」
「は〜〜〜い!」
あぁ、やっぱり俺はドイツが好きだなぁって思った。
優しくて、強くて、不器用で、とてもあったかい。
手を降ってからドイツと日本達と別れて、人が少ない落ち着ける場所に移動した。
十月も終りになると、外は冷えているから、庭に出ている人は俺だけだった。
そっとさっきの手紙を見る。
なんでだろう、すごく心がざわめいた。
宛先は記されていない、紙の表面を撫でながら、そっと蜜蝋を壊さないように開けた。
繊細で真っ直ぐでちょっと右斜め上に上がっている癖のある文字。
懐かしくて懐かしくて、遠い日に別れた君の文字。
「しんせい……ろーま…………」
俺の呟いた言葉は寒空に溶けた。
掲 載 131006
再掲載 131208