貴方に薔薇の花束を


*一応夢小説だったのですが、夢主が空気過ぎてこちらにも掲載します
*序章曲で連載中の『旅猫』主人公でこちらでは名前変換できません
*できなくても問題ありません(爆)
*単純にオリキャラいるなー、ぐらいで流して下さい




二月十一日……イギリスの数少ない(国の)友人・日本の誕生日だ。

マオの居候先のイギリスは慌ただしく、部屋と温室を行き来していた。

そんな様子をちらりと横目に(自称)猫のマオはクワァと欠伸をもらした。

まだまだ寒さが続くが、室内の暖炉前は心地よい。


「マオ!マオ!!」

《ん〜、どうかしたのかい?イギリス》

「これで良いと思うか?!」


お気に入りのカーキーを基調とした明るめの色彩のスーツは、ぴたりとイギリスに溶け込み、調和している
黙ってみていれば、これぞイギリスの紳士と言った所だろう。

手にはイギリスが世話を丹念にしている大輪の薔薇たち。

___その八割が日本の誕生日の為なのを知らぬのは本人ばかりだろう。

瑞々しい紅い薔薇は絹のように光を弾き、あまやかな香りを放つ。

想い人の為に懸命に愛された花は、明日その役目を果たすのだ。

小妖精がさざめき、楽しそうに笑った。


《良いんじゃない?

 ”彼女たち”も嬉しそうだし》

「分かった!」


嬉し気に部屋をさるイギリスの背中を見送り、マオはふぅと溜め息を零した。

しかし、何であんなに____


《奥手、過ぎるだろ……》


マオの思念に部屋に留まっていた小妖精が同意する様に頷いた。

居候先の主人___イギリスはとっっっっっっっっっっっっってもヘタレだった。

知り合い十数年経っても、口付けどころか告白すらしてないって……。

しかも片思い歴は百数年。

時代が許さなかった時は仕方ないにしても、現代は特には問題ないはずである。

率直になれず、本体知識曰く”ツンデレ”にしても、これは酷い

今時の控えめな国・日本でさえ、これはない。

精一杯の告白が紅い薔薇の花束ってね。


《世の中、言葉にしなきゃ伝わらない事ってあると思うけどなぁ……》


まぁ、イギリスの恋はイギリスの恋。

本人の挙動不信具合を片目で見つつ、日本のオコタの温かさ求めてマオは立ち上がる。


《さ〜〜〜て、行こうかな♪》


によによ笑いながら転移した。





***





___日本の邸宅。

イギリスとは違い、友人の多い日本の元を訪ねる国は多い。

かつて枢軸としていたドイツやイタリアはもちろんの事、中国や台湾や韓国などのアジア組、トルコやギリシャなどの地中海組やアメリカなどなど。

賑やかな事は嫌いでは無いが、もうすこしゆったりと過ごしたくも思う日本がいた。

めぼしい知人・友人は粗方訪ねて来たり、プレゼントを受け取った日本は、居間をしばし離れた。

逢いたい人は未だ訪ねて来ない。


「……イギリスさん……」


ピンポーーーーーーン


噂をすればだろうか。

あんまりにもタイミング良く、チャイムが響いた。

日本は足早に玄関に赴いた。

素早く解錠し、引き戸を引く。


「誕生日おめでとう、日本」

「イギリスさん……ありがとうございます」


日英同盟の時から変わらぬその花束に、日本は笑みを乗せた。

その意味を訊いても良いのだろうか。

そっと視線が交わり、手が伸びて、重なる。

毎年毎年送られる花束は美しい赤を基調としたもの。

紅い薔薇の花言葉は一番有名だ。


___愛しています。


黒と緑が交差する。

あまい花の香りに日本は包まれた。


「イギリスさん、薔薇の花束、ありがとうございます」

「べ、別に日本のためじゃないからな!」


ふんわりと笑う日本に、イギリスは頬を赤らめつつ、思ってもない事を口走った。

イギリスは言い終わってから、内心気まずく思って視線を逸らした。

そんなことを言いたかった訳ではないのに、素直になれない。

イギリスの脳裏に友人(猫?)の嗤う声が響く。


《今年、言えないようじゃ一生無理じゃない?》


イギリスがもたもたしている前に、別の良い人見つけちゃうでしょ〜、とチェシャ猫のごとくニヤニヤ嗤った。

真実、友好関係の広い日本を快く思っている国は多い。

イギリスの弟のアメリカやカナダとも、親好は深く、社会的にな利点から考えれば付き合う可能性は高いだろう。

理性がそう告げれば、感情が暴走した。

嫌だ!嫌だッ!!!

今年こそ告白をして見せる!!とイギリスは心に決めたのだ。

この友人という関係を変える為に。


「日本」

「はい、イギリスさん」

「…………好きだ、好きなんだ!」


 愛 し て る 。


イギリスが花束ごと日本を掻き抱いて、囁いた。

友人という関係に、今ピリオドが打たれた。

日本の反応が怖くて、イギリスは瞳を閉じた。

心臓の鼓動が相手に聞こえるのではないかと思う程、早く刻む。


「私も、御慕い申しております」


その一言までが、永遠に思えた。

イギリスの中で言葉が分解→理解にたっぷりと間が空き、一気に顔を赤らめた。

日本もその間、もじもじと恥ずかし気に身を捩る。

視線が重なり、互いの唇が近づいて______。


《おや、お邪魔虫だったか?》


硬直した。

ぎぎぎぎぎぎ、と足下に視線がブリキ人形より拙く動いた。

二人の足下には、藍色の毛並みをした美しい猫___マオがいた。

さらに視線を玄関の方へ向ければ、出歯亀隊(某アジュールの国と某メタボの国と某日本の兄の国と某パスタの国とその保護者)が、ニヨニヨしたり、精神崩壊していたり、普通に祝福をしていた。



は、は、恥ずかしい!!!!!



奇しくも、二人の心情は一致し、心の中で大・絶・叫。

斯くして、日本とイギリスはようやくようやく付き合い始めたのだった。


おわり



日記掲載 120212
再 掲載 120216
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