本音。


どんな人からでも本音を聞き出せるという秘薬が、敵から情報を得るために開発された。
試供品として開発に携わっていた俺は貰った訳だが……。
「本音、ねえ…」
本音を聞きたい人なら幾らでもいる。
十代目に俺は右腕に相応しいか聞きたいが、こんな薬使うなんて畏れ多すぎる。
……山本は……、
と考えたら顔がかーっと熱くなった。
ダメだ。好きな奴いるか、なんて聞けないし、聞きたくない。
「獄寺ー!」
「っ、山本!」
思わず薬を後ろ手に隠した。
ノックしろっていつも言ってるじゃねーか!バカっ!
「ん?何それ?」
「あっ!」
洞察力の鋭い上に、考えるよりまず行動派の山本は咄嗟に隠した薬をひょい、と取ってしまった。
行動するよりまず考える派の俺は、どう言い訳しようか頭が真っ白になり固まってしまう。
「あっ、これって、前に獄寺が言ってた開発中の秘薬じゃねえ?えーと、確か、本音吐かせちゃうヤツだろ?もうできたんだー」
なんて鋭い奴なんだ山本武。
「返せよ!まだ試供品段階なんだ!」
「へえ……じゃあ誰かで試さなきゃなんねーんだ?」
しまった!思わず口を手で覆う。
「ツナで試すつもりだった?」
「なっ!十代目にそんなことできるか!」
「じゃ、俺で試すつもりだったんだ?」
「ち、違う!もういい!シャマルにでもくれてやる!」
取り返そうとする俺の手を山本が軽やかにかわす。
「俺、試されてもいいぜ?」
「へ…」
「獄寺にどんな質問されんのか、ちょっと興味あるし」
あ、でも……。とムカつく顔で天井を仰ぐ。
「俺ばっか本音聞かれるってフェアじゃないのな」
何がフェアだ。勝手に薬奪っておいて。
「だからー、半分ずつ飲もうぜ?」
「はあ?」
「俺が先に飲むのな、えいっ」
「あっ!」
反論する間もなく、山本が半分飲みやがった。
ごくん、と飲み干して、ニコッと笑った。
「ほら、何でも聞いていいぜ?」
「う…」
何聞けばいいんだ?俺のこと……なんて聞けるわけねえだろ!
どうしよう。思わず困った目で山本を見上げてしまったから、慌てて睨み付けた。
すると、ふ、と山本がまるで慈しむように微笑って、
「可愛いなあ、獄寺は」
「はあ?!」
「やっぱ何年見てても可愛いんだよなあ。綺麗だし、目が離せねえよ」
「は、え?山本?」
「他の奴のものになったらどうしよう。すっげー不安」
ちょっと待て!なんだこれ!?
俺、まだ何も聞いてねえぞ!?
「ずっと見てきたのは俺だからな」
「ちょ、黙れ」
思わず山本の口を手で押さえる。
そうだ、何か他の質問しよう、他の他の…。
「あっ!お前、最近デスクワーク部下にやらせてるだろ!?」
「うん。獄寺が叱りに来てくれんの待ってるから。だって、好きな奴には毎日会いてぇだろ?」
「〜っ、」
何なんだこの天然タラシは…!
山本は恥ずかしげもなく、笑顔を見せて、例の薬を俺に手渡してきた。
「はい、次獄寺の番な?」
も、もしかして、実はこの薬、本音じゃなくて、はの浮くような言葉ばかり言っちゃうような薬なのか!?
だったら……!俺は残りをぐい、と飲み干した。
それを見た山本は口元に笑みを浮かべながら俺に近づいてきて、後退る俺を壁まで追い詰めて、手で逃げ場を遮った。
卑怯だ、てか、目がマジすぎて怖いんだよ!
「なあ、そろそろさ…俺が欲しくない?」
「っ、……ほ、しい……」
死にそうなくらい恥ずかしくて、沸騰しそうなくらい顔が熱くて……
なんて思ってたらあそのまま頭が真っ白になって卒倒してしまった。

- 4 -


[*前] | [次#]
ページ:






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -