ほら、やるよ。
ツナが家で誕生日会をしてくれて、ツナを送ったそのあと、獄寺が家に戻ってきてくれた。
そうぶっきらぼうに渡された、スーパーの袋。その中の並盛牛乳。118円と記入されたしわくちゃのレシートの裏の、おめでとう。の汚い字。獄寺の照れた顔。
涙が出そうな程嬉しかったことを十年、色褪せることなく思い出せる。
毎年恒例の俺の誕生日会。色々な物を貰ってきたけど、十年前のあの牛乳とレシートが今までで一番嬉しかった。なんて、怒られそう。
獄寺に。なんて考えて、思わず頬が弛む。
「あ、来た来た。主役が!」
「わり、遅くなった。毎年サンキューな」
「けっ、お前が遅れて来なかったことなんてねーだろ。」
「あー!獄寺さん!主役さんにおめでとうより先に悪態なんですかあ?」
神経疑いますぅ。と言うハルに、何だとアホ女!と怒鳴る獄寺。もうやめてよー!と宥めるツナ。笑う俺。幸せだな、と思う。
「改めて…おめでとう!山本!」
「山本さんおめでとうございますー!」
ツナに球界で有名な職人が作ったというグローブを貰う。りボーンからも日頃の成果と、なんとかっていう有名な奴が作った雨属性のボックスを貰った。ハルや笹川はケーキを作ってくれた。
ワイワイと囲まれて、一通りプレゼントを貰ったら、ツナが俺にこっそりと耳打ちしてきた。
「最後はとっておきのプレゼントだよ」
ほら、と獄寺が座ってるカウンターの隣に促される。ツナは俺の気持ちを知っている唯一の友人なのだ。
サンキュ、と軽く礼を告げて、グラス片手に獄寺の隣に腰かけた。
「となり、いい?」
「……もう座ってんじゃねえか」
獄寺がぐい、とグラスに残ってたワインを煽った。
ワインをとくとくと注ぎ足してやると、素直に礼を言われる。
後ろの賑わいが随分遠くに聞こえる気がした。
「なあ獄寺、ピアノではっぴーばーすでーとぅゆーって弾いて欲しいな」
「はあ?下らねえな」
はっ、と獄寺が笑った。
そしてピアノは無いから……と断りを入れて、小さな声で歌ってくれた。
「happybirthdaytoyou、happybirthdayDear野球バカ〜♪」
目の前に小さな箱を差し出される。
「誕生日、おめでとう」
両手でその小さな箱を受けとる。
開けていい?と何故か秘密ごとのように聞いてしまう。獄寺は勝手にしろ、とまたワインを一口煽った。
するり、と丁寧にひとつひとつ噛み締めるように開けていく。小箱には透き通るように綺麗な銀のチェーンが入っていた。そして、小さなバースデーカードが挟まっていた。
「お前雨のリング下げてるチェーン錆びてただろ。それプラチナだから変色しにくいし、雨属性のお前にぴったりだろ?」
じっくりとそのチェーンを見つめる。すごく透き通っている色で、獄寺の髪色みたいだ。
「ありがと…獄寺」
それに、俺のことよく見ててくれてるのな、と自惚れそうになるくらい、それが単純に嬉しかったりもした。
「獄寺、これ、つけてくんねーかな?」
「しかたねーな」
獄寺が俺の後ろに回った。獄寺の冷たい綺麗な指が俺の首筋を包み込むようにして、 チェーンを付け替えてくれる。
「獄寺、これ一生大切にするから」
この、バースデーカードも、もちろん。
俺が選んでやったんだから当たり前だと誇らしげな獄寺。
そんな獄寺を見て、チェーンを掌で確かめて、胸の中心がとくん、と温かく脈打った。

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