24山→獄


俺のこと凄く大切に想ってくれるから、
俺のこと好きだから、
可愛いから、
おっぱいが大きいから、
スタイルがいいから、
有名な女優で綺麗だから、
同盟ファミリーのお嬢様だから、
歴代の彼女達はそんな感じで付き合ってきた。
でも、俺には、そんな理屈なしで、大切な人が10年も前からいる。
大切すぎて、恋愛よりも友情を選んだ。
臆病だ、何だって言われたって、今でも間違ってなかったと思う。
「十代目にはまだ言ってないんだが…俺、結婚しようと思う」
固まった。真っ白になる。油断したらうっかり泣きそうだ。
そうか、と呟いた。
「何だ、それだけか。テメーならもっと聞いてくるかと思った」
聞きたくねえもん。できねえよ。
「そっか……俺達ももう、そんなこと考える歳なんだな……」
グラスが汗をかいたビールを飲み干す。
まずい。
くらり、とアルコールが回って、ああ、こんなこと真っ先に報告される為に友情を選んだんだっけ、とふと思った。
「なあ、獄寺……」
「ん?」
「俺さ、男が好きみてえなんだ」
「ふーん……」
意外にも反応は淡白で、図に乗ってしまった。
酔ってるから、
もう獄寺が他の奴のものになるから、
だから、だから……理屈ばかり、並べて。
ひゅ、と息を飲む。
獄寺のグラスを持つ手に指を重ねて、俯く。
「一回、抱かせてくれよ…」
耳まで真っ赤だ。顔あちぃ。
指が情けなくもカタカタと震える。
「……誰かの代わりなら、お断りだ」
予想していなかった返事に頭を上げると、獄寺がビクリと目を見開く。
「お前はっ、サイテーだ…っ」
「獄寺……」
「何でこのタイミングなんだ?!彼女いるくせに……!なんで…なんで……」
獄寺が俺の胸ぐらを掴んで、立ち上がる。
思わず膝立ちになって、獄寺の震える身体を見つめる。
「こんな時まで、ケジメつけさせてくれねえんだ……、お前のこと、」
好きだ、って……、と小さく声が震える。
ずっと間違ってなかったと思ってた。
震える獄寺を見て、泣き出しそうな獄寺を見て、
今更、間違いだったのか、と思う。
自分を殺したくなるくらい、後悔するなんて、思わなかった。
「獄寺……」
「……抱けよ」
ネクタイをほどいて、シャツはだけさせる獄寺を慌てて抱き締めた。
ああ、獄寺を抱き締めてる……。ずっと、こんな風に抱き締めたかった。
加減できなくて、ぎゅう、と抱き締め直して、獄寺の曝けだされた肩に鼻先を埋めた。
「っ、ごめん」
「やまも、と……」
「ずっと、俺が間違ってた。大切だから傷つけたくなくて、友達のフリしてた」
本当は、
「結婚しないで…獄寺…。俺、俺……」
ああ、どうやって伝えたらいいんだろう。
どうやったら伝わるんだろう。
今まで隠すことに必死すぎて、やからねーや。
「俺ってやっぱダメなのな。昔から獄寺がいねえと何にもできねえの。だからさ、上手く言えねーんだけど、」
獄寺の目を見る。
キラキラした眸で俺を見つめてくれてる。
「俺にはお前が必要なんだ」
だから、どうしよう。困っていると、獄寺が眉を下げて微笑んだ。
「こういうの、意外と苦手なんだな」
あんまりにも綺麗で、かわいくて、ドキドキして、また顔に熱が集まる。
お、おう。とだけ何とか返すと、いつもは直球なくせに、とクスクス笑う。
ああ、お前のその顔を何が何でも守りたくて、今までで一番かわいく微笑う獄寺のこの表情、この先させることができるのも、見ることができるのも俺だけでいい。
あー、友情なんて、友情でいいなんて、傷つけたくないなんて、そんな綺麗事、それこそ理屈じゃないか。俺って本当にバカだ。

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