Vivo | ナノ
1





(何も知らない自分にいろいろな事を教えてくれたのは、スペインだった)



『せや、ロマーノ』
『なんだよ、』
『自分のこと、よー分かってないやろ』
『分かってるに決まってんだろーが!なめんなよ、チクショーめがっ』
『えーじゃあ、右手が何処か分かってるん?』
『・・・へ?』

 スペインはしゃがみ、温かく大きな両手でロマーノの小さな手を包みこんだ。ロマーノは嫌悪感に満ちた表情を浮かべ、スペインを睨み付けた。睨み付けられたスペインはひるむ様子もなく、喋り始めた。


『右手はプリンディシあたりかな、左手はサルデーニャ島あたりで・・・、足・・・は、せやな、シチリア島。ロマーノの頭はイタちゃんと同じで真ん中のローマや。ロマーノの綺麗な目は海みたいやからディレニア海かな?』


 スペインが行った名前はどれも、ロマーノの知っている地域名ばかりだった。なぜ、右手がプリンディシなのか、なぜ頭はヴェネチアーノと一緒のローマなのだろうか。小さな頭の中で一生懸命考えていると、スペインはそんなロマーノを見て、あせったように誤りだした。


『いっぺんに言うてしもうて、悪かった!急に言われてもびっくりするわな・・・はは、つい夢中になってもうて』
『だから右手がなんだっていうんだよ、コノヤロー』
『繋がっているっちゅー事や。例えばなプリンディシの治安が悪くなったりすると、ロマーノの右手が痛くなったり、思うように動かなくなったりする。せやからロマーノの体調管理も親分の仕事なんやで』
『・・・じゃあ、ココは何なんだよ』
 ロマーノは一番気になっていた部位、心臓を右手で押さえつけた。スペインは少し考えた後に、こう答えた。
『そこはなぁ・・・うーん。一概には言えへんけど、俺はこう考えとるな―』



ヒト



『ヒト?』
『せや、ここの心臓はロマーノの所に住んでる皆が凝縮してるような気がするで』
『・・・よく、分からねーぞ、ちくしょう』
『よは、自分の国を守るという事は、ロマーノの国に住んでる人を守らなあかんっちゅー事やで。せやから、ロマーノの心臓が止まるっちゅー事はヒトも同じように消えてしまうかもしれへん』
『・・・どうすればいいんだよ、チクショー』
『うーん、難しいなぁ、治安を守るとか・・・そういう事やなぁ。あ、あったあった!』



人間を好きにならんと、守りたいって思えへんから、ヒトを好きになってあげてな?













 あれから、ロマーノは自分でも分かる程に成長して、自分自身で体調をコントロール出来るようになった。それに少しずつだが弟のヴェネチアーノとお互いに歩みよりも出来るようになってきている。だが、ロマーノは未だにスペインの保護国としてスペインの家に身を置いている。


「なぁ、スペイン・・・覚えてるか」
「ええ〜何を〜今記憶が飛び飛びやから、質問後にしてもらってええ?」
「いや、今がいい」

 ロマーノはベッドの傍に歩み寄って、高熱でダウンしているスペインにそう問いかけた。体調が悪くて動けない程になっているという事はそれだけ、国が危ないという事。それなのに、何故ロマーノを手放さないのかと、周りから囁かれ続けられている。



「スペインって、ヒト・・・好きなのか?」



 そのロマーノの問いかけにスペインは目を丸くして、顔だけを動かしてロマーノの目を見やった。ロマーノの目は既に潤んでいて、耳まで真っ赤にしていた。
「ははっ、バレてもうたかぁ・・・、せやなぁ。ロマーノと天秤にかけてもうたら、ロマーノの方が簡単に勝ててしまうやろう・・・なぁ」



 ロマーノは薄々気づいていた。
スペインは自分自身に執着がないという事。ロマーノを手放したくない一心で、どれ程の犠牲を払ってきたかは分からないが、ボロボロになっていくスペインを見てれば一目瞭然である。
いつか、自分が消えてしまうのではないかという不安感をスペインは抱えてない。まるで、いつ消えてもいいかのように・・・。



「オレはなぁ、ヒトを好きやないで。ロマーノさえ居ればええよ」


 その言葉にロマーノは何も返答をする事が出来ず、スペインの手を握った。

- 1 -


[←] |TOP| []


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -