はきだめ | ナノ


0314 01:34

狩屋と神童 inzmGO

白で埋め尽くされた部屋のベッドに、雷門中キャプテンが痛々しい姿で体を預けている。少し前に、この人と自分とは分かりあうことが出来ないのだと悟った。雷門に転校をする前から噂は聞いていた。神童拓人。天才。そしてなにやら育ちも良いとか。俺とはまったく違う環境で生きているかれのことを、理解どころか嫌悪さえ抱いた。周りからもてはやされて愛されるなんて。考えるだけで惨めな気分になる。心臓のあたりをぎゅっと握った。
「俺はあなたが嫌いです」
「ああ、そうだろうな」
「知ってたんですか」
「なんとなく」
そう言って息を吐く姿は、ともすれば消えてしまうのではないかと思うほどに儚げだった。いつもグラウンドで見るような活気のある彼はこの部屋のどこにもいない。それでもこの人は、やはり俺たちのキャプテンなのである。慕われて愛される、要なのだ。このままずっと入院していてくれれば俺は気が楽になるのに。



0305 02:47

臨静 drrr!!

死。死だけを望んでいる。それが穏やかなものであろうがなかろうが、そんなものは課程でしかない。俺は結果が欲しい。平和島静雄という人間(であるかは実に!疑わしい存在)の死という確かなものが欲しくて堪らないのだった。課程にはこだわらないけれど、趣味的にはグロテスクで見るも無惨な姿になってしまえばなお良い。俺がシズちゃんに向ける愛は人類に向けるそれとは違っている。嗜虐とか愛玩とか、多少歪ではあるが立派な愛だ。
「シズちゃんがちゃんとした普通の人間だったらなあ……そしたら俺はこんなに歪んだ性格にはならなかったと思うんだよね」
「俺だってそう思うさ」
「殺してあげる。愛してあげる。だから君は死んでいいよ」
「理由になってねえんだよ」
極上の死を贈ってやりたい。うっとりするような白い骨を灰にして。



0305 01:54

グッド・バイ/基山と狩屋 inzmGO

勿体無い人だ、と思った。きっとこの人はいずれ全てを捨ててしまうのだろうと、確信さえ抱いた。大抵のことは自分でやってしまうし、それだけでなく誰かの分まで引き受けてしまう。なんでもそつなくこなす彼は憧れの的だった。愛想を尽かさずに俺の面倒を見てくれるのも、本当に嬉しかったのだ。燃える赤毛と不思議な光彩を持つひとみの彼の人は、しかしどこか寂しさを纏っているように見えた。
「ヒロトさんはどうしてそんなに、」
天体望遠鏡を持ち出して、星空を延々と眺めた夜があった。その時の俺はまだ深い夜に起きていられるような歳ではなかったので途中で寝てしまい、次に意識が覚醒したのはヒロトさんが運転している車の助手席だった。その夜の暗闇に、彼は何を見ていたのか俺は知ることが出来ない。寂しさの理由も、まだほんの子どもである俺には察しも付かないのだ。俺を見るそのまなざしの奥に何を隠しているのかも。



0214 02:23

スプリンター/霧野と狩屋 inzmGO

あの人は明日死んでしまうかもしれないよ。そんな不吉な言葉を霧野は耳にした。ひょっとすると、それは彼の幼なじみのことかもしれないし、サッカー部のマネージャーの誰かかもしれない。可能性など誰にでもあり得るが、霧野の頭の中に浮かぶのはただ一人だけだった。淡い水色を纏う後輩だ。夏の空の色に似ている。確信のようなものが心に渦巻いて、それを振り切るように走った。霧野は足が速い。サッカー部に入らなくても、或いは陸上などで活躍を期待されていたかもしれない。辺りの景色が足早に去っていく。その中に水色を見付けてはまた走り出す。居場所なんて分からなかった。彼が行きそうな場所を霧野は全く知らなかったし、考えるような余裕もなかった。探している内に夜になっていた。仕方ないと諦めて家に帰ったが、そわそわと心が落ち着かない。もし、明日学校へ行って、アイツがいなかったら。朝になって登校すると、件の後輩は事も無げに笑っていた。安心も束の間に、やはりまたあの声を聞く。走る。何度も繰り返しやがて気付いたのだ。明日死ぬかもしれないというのは、自分だってそうだ。目を瞑ったら、もう二度と覚めないかもしれない。明日というのは無限に存在する。来るか来ないかという違いがあるだけだ。霧野は迎える明日に、彼を失わない為に、ただひたすらに走る。

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BGM 走る/坂本真綾



0212 00:52

言切 fate

「殺していいよ」
ごとり、と荒々しく音を立てて落ちたのは彼が愛用していた拳銃だった。弾が入っているのかいないのかは知らない。装填されているなら、引き金を引けば目の前の男は死ぬだろう。精神的には既に死んでいるような男だ、今更殺したからといってあまり大差はない。ずっとこの手で命を絶ってやりたいと思い続けていたが、この千載一遇の機会は私が望んだものではなかった。私は失望している。
「死にたいのか」
「そうだよ。僕はもう楽になりたいんだ」
「なら諦めろ。私はおまえを殺さない」
生きながら苦しめばいい。もはやこの男の辛苦などは愉悦の対象にすらならない。おまえと私とは別の人間なのだ。深淵を見ているみたいな深い黒のひとみには、何も映すものはないのだろう。私はいっそおまえを憎んでいるし、仄暗い期待をもっている。(殺したい気持ちと生かしてやりたい気持ちがせめぎあっている。いつか死が訪れるなら、私が。)拳銃に弾が入っているかは知らない。銃口を額へ突き付けた。この瞬間だけが永遠に続けばいいと願った。ここより先に進みたくない。



0208 12:16

※言ギル fate

びりびりと痺れるような感覚に綺礼は瞠目する。脊髄を甘く走るそれは何かに似ていて、しかしその正体が掴めない。例えば傷を抉った時のような、例えば爪先から忍び寄る得体の知れない恐怖に期待をもった喜びのような、そんなものだ。こぼれたワインと揺れる瞳と、そしてなにより鮮やかな血液が視界を真っ赤に染めあげていた。綺礼の目の前に横たわる金髪の青年の手のひらに、深々と刃物が刺さっている。
「ハッ、どうした綺礼、おまえが我にしたいことはこのようなことではないだろう?」
どこまでも余裕のある笑みを金色は綺礼へと投げた。それは全てを知っているような、綺礼の中身を透かして見ている口振りだ。ずっと昔の、英雄の王である彼には一介の神父でしかない綺礼の気持ちなどは取るに足らないちっぽけなものなのだろう。綺礼は刃をより深く押し込んだ。溢れ出す色は青年の瞳と同じだった。人が死ぬ時の色によく似ている。

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実は三人称の方が書きやすいです



0202 03:55

幻、夜/不動と鬼道と inzm

夜は待ってはくれない。決して。

声を上げて泣いた。それはもうみっともなく泣いた。ぼんやりとした明かりを纏った街灯が並ぶ道に、何かが見えた、気がしたのだ。ひどく懐かしいような。それがなんだったか思い出せないことが歯がゆい。だから、家に帰る道すがら人とすれ違うこともなく、一生懸命に思い出そうとしたのだがそれは叶わなかった。いつか瞼の裏側に映った景色が褪せていくように、セピアになる。そうして俺は色を失った。綺麗に色付いたのは頭の隅にちらりとよぎる誰かの顔だけだ。しかしそれすら消えていく。不動には申し訳なく思っている、いつも。なあ、もうおまえの瞳の色を忘れてしまった。
「でもそれって良いことなんじゃねえの。おまえにとっては」
「何故?」
不動はいっとう優しい顔をする。残酷なようにも見えた。
「だってこの鮮やかな世界は美しくなんかないぜ?どこもかしこも汚いんだよ。醜いものを見るくらいならいっそ美しいものも見えなくなればいい」
「…あまり、分かりたくはない話だな」
「分からなくていいよ」
俺が本当に置いてきてしまったものはなんなのだろう。不動は何も教えてくれない。きっと全部知っているはずなのに、だ。色のない冷たい世界は何故だか優しすぎて違和感を感じる。俺の目は赤い色をしていたはずなのに、どこにも赤なんて散らばっていない。例えるなら夜だ。目隠しをされて、そこに立っている。

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これで長い話を… 多分明王が犯人



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