ペットの1日を見てみましょう
はい、どーもー。皆さんこんにちは。菜緒ちゃんの可愛い可愛いペットの佐助くんです。
菜緒ちゃんに拾われて毎日充実した日々を送っています。今日はそんな俺様の一日をご紹介しようと思ってるんだなこれが。
ペットの一日だぜ?なかなか見れないよねそんなの。ペットの事を知りたい飼い主のお姉さん方必見!なんてね。
んじゃさっそく紹介していこっか。
俺様の一日は菜緒ちゃんが起きる30分前に始まる。
別に同じ時間に起きてもいいんだけど朝の忙しい時に菜緒ちゃんにベタベタ出来るのってこの時だけなんだよね。
寝てるからなんの反応も返ってこなくて寂しいけど。
抱きついたり、ちゅーしたり、あっ、これほっぺにだから!口ちゅーはしないよ!
だってバレた時のおしおきが怖いからね…。
まあ…バレなきゃいい話なんだけどさ。菜緒ちゃん特に寝起き悪いからそん時はそん時。ケースバイケースね。
これはくれぐれも菜緒ちゃんには秘密ね!約束!
あとは寝顔とか堪能しちゃったり。
最近発見したんだけど、抱きしめた菜緒ちゃんの寝顔を見下ろすのも可愛くて好きだけど、腰に腕回して下から見るのも好き。抱きしめられてるみたいでいいんだよ。
何より感触がいいよね。顔に当たる柔らかい感触がね…。
着けて寝ちゃダメだからねお姉さん。苦しいしカタチも悪くなるし、なんせ俺様の楽しみなくなっちゃう…っと何言ってんだ俺。危ない危ない。
ああ、こんな事してんのもバレたらおしおきだな。
……うわあ怖ぇ!菜緒ちゃんほんとサドいからなあ。
でも夜まで会えなくなるしさ、これくらいならいいよ、ね?
だからこれも秘密!あっは。二つも秘密共有しちゃった!君だから教えたんだよ!
たっぷり30分堪能してご主人様、もとい菜緒ちゃんを起こします。
菜緒ちゃんってしっかりしてるけど実は朝弱いんだ。意外じゃない?今までだいぶ頑張って一人で起きてたんだろうなー。
「菜緒ちゃーん、朝ですよー、起っきしてー」
「んンン…いやー…」
いやーだって。わー可愛い。
しばらく呑気にそのやり取りを繰り返してたけど、本当にそろそろ起こさないとヤバイな。
「菜緒ちゃん菜緒ちゃん、遅刻するよ」
「や、だ、…ってば」
ー…ヒュッ・ドスっ!
…うおお怖っえええ!今すごい速さで拳が目の前横切った!?か、紙一重で避けたけど…うわあ枕超へこんでる。避けてよかった…。
つかこれ寝てる人の拳じゃねーよ。どんだけですかご主人様。
また振りかかってくるかもしれない拳対策に両腕を拘束して菜緒ちゃんに跨がる。
端から見れば絶好のシチュエーションなんだろう。俺の心臓もドキドキだ。
ああ、色んな意味でドキドキだ。
「菜緒ちゃーん起きないとほんとヤバイって。お願いだから起きて。大人しく起きて」
「………おきた」
ぱか・と開いた目に安堵する。しかし自分のおかれている状況に気付いた菜緒ちゃんは思いきり眉を顰めた。
「何朝から発情してんの」
「ゲフっ」
脇腹へ華麗に入る蹴り。寝起きだから威力は落ちるけどそれでも充分痛い。
「起こそうとしただけなのに…」
「普通に起こしなさいよ」
普通に起こそうとして命の危険に晒されたんですけど!?でも結局痛い目みたから同じだ。
「着替えるから出てって」
そう言ってぽいと廊下に出される。
…なんか俺様超不毛。
気を取り直して次は朝ご飯でも作りますか。
脇腹をさすりさすりお気に入りのエプロン着けて袖を捲る。昨日の晩に下準備しておいたから楽なんだよねー。はい、あっという間に完成ー。
「んー、いーにおい」
ほんわりした寝起きから一変、バリバリのキャリアウーマンに変身した菜緒ちゃんを席に促して、はい一緒にいただきます。
「佐助のご飯食べるようになってから肌の調子いいわー」
「色々考えてますからねえ」
ふっふっふ、とブイサインすれば「ありがと」なんて満面の笑み。
その笑顔が見れるなら俺様どれだけでも頑張っちゃうよ!
食べ終わったら歯磨きして玄関までお見送り。
カツン・とヒールを鳴らして姿見で全身を確認するカッコイイご主人様。
「今日も相変わらずイイ女」
「当然」
にひっとお互い笑って、どうかな〜大丈夫かな〜なんて思いながら唇をちゅいと突き出してみる。
「行ってらっしゃいのちゅーは?」
「バカ」
ちえ、やっぱダメだったか。連敗中だなーこれ。残念。
いつものことだからあっさり引き下がると首のシルシをくい・と引っ張られた。
「へ?」
間抜けな声が出て、間髪入れずに聞こえた軽いリップ音と頬に柔らかい感触。
あ、リップついた、なんて呑気に言って呆けたままの俺の頭をくしゃりと撫でる。
「いってきます」
微笑んでヒールを鳴らして出ていく後ろ姿。カチャン・と閉まったドアの音がやたら響いた。
「ズリーよ菜緒ちゃん」
頬に触れ、姿見で確認すればそこには確かにご主人様の口許を彩っていたのと同じ色。
今日は特別最高な日になりそうだ!
菜緒ちゃんを見送った後は家事に勤しむ。
とは言っても毎日掃除してるから隅々まで綺麗なんだよな。
そういえば今日は金曜日か…菜緒ちゃんも疲れてるだろうな…。
よし、今晩は特に栄養のあるものを作ろう!って事で買い出し買い出し。
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…ちょーっと買いすぎたかな。
まあ休みの事考えたらこれぐらいのがいいかもねー。
菜緒ちゃんと一緒に買い出し兼散歩ってのもなかなか素敵だけど、今は家でいちゃいちゃしたい気分。あ、プリンの材料買ってきたんだった。菜緒ちゃん喜ぶかな。
「あふ…」
んー、掃除も買い出しもプリンも作り終わったし、やる事がない。
昼のドラマは昼下がりに似合わずドロドロしてるし、再放送のドラマだって最初から見ないと分からない。
菜緒ちゃんとこから本でも借りて読もう。
何が面白そうかなー。指さしながら背表紙を眺めていく。お、この作家好きなんだよね。結構あるな、菜緒ちゃんも好きなのかー。
意外な共通点に思わず頬が緩んだけどそれも一瞬のうちに凍り付いた。
「…世界の拷問・器具全集…」
有名な拷問からマニアックなものまで!さらに使用された器具も徹底解説!
…なにこれ。
うわあ、しかも他のどの本よりも読み込まれてる感漂ってる。最近熱心に本読んでると思ったらこれか…。
菜緒ちゃんこれ以上磨きをかけてどうすんのさ。
とりあえず見なかった事にして、いや結構トラウマものだけどね。でも菜緒ちゃんになら…とか思ってる俺も大概かなー。
…あー、ごめん。これも秘密にしといてくれる?言ったら色々と後戻り出来そうになさそうだから。
一冊手に取りベッドに腰かけ、パラパラと読み進める。
集中して読み進めるうちに丸まってきていた背を伸ばすように寝転がれば、スプリングの効いたベッドが身体を受け止めた。
「んんんー…、ん?」
ぐぐっと手足を伸ばしながら仰向けからうつ伏せになると、ほわりと鼻をかすめる香り。
あー…これ…
「菜緒ちゃんだー…」
はー…落ち着くなー…。
そうしてゴロゴロしている間に俺はいつの間にか意識を手放していた。
目が覚めたのは夕方。西陽が差し込む部屋でぼんやりする頭のまま時計を見て跳ね上がる。
「やっべ、寝過ぎた!」
大慌てで諸々の準備を整え、最後に沸かした風呂を止めた所で待ち望んだドアの開く音。
「ただいまー」
「菜緒ちゃん!」
おかえりー。ほとんど小走りでお出迎え。ぱっと目が合うと少し疲れた表情がほっと一息付いた笑顔になる。
「ただいま佐助。お留守番ありがとね」
そんなのどうって事ないよとばかりに抱きしめて、恒例のちゅーの嵐。
くすぐったいと笑って身を捩るけど、そんなのお構いなし。だって一日ずっと我慢したんだから!
「ほら、あとで構ったげるから」
ね?たしたしと頭を撫でられて未練タラタラのまま腕を離す。
いい子ね、なんてご主人様ぶってるけど菜緒ちゃんも実は俺の事可愛がりたいだろ?口でどんなに繕っても目がそう言ってるんだよね。
でもそんな事おくびにも出さずにご主人様の言う事に従うなんて俺様ペットの鏡じゃない?
腕に寄りをかけて作った料理は大絶賛。
美味しい美味しいと食べてくれる姿見るだけで幸せだ。
片付けも終わり、やっと来たまったりタイム。
「うううー菜緒ちゃーん」
ソファの端に座っていた菜緒ちゃんの膝めがけて雪崩れ込む。細い腰に腕を回して、頭を膝に置けばゆっくりと撫でてくれる。
はー幸せ………あ、そういえば。
「プリン作ったんだった」
「えっ、プリン!?やった!」
撫でる手を少しの間ガマンして冷蔵庫まで取りにいく。
ひんやり冷たいそれをスプーンとセットで渡してソファに並んで座ってつつく。
ほどよい甘さと極上の弾力。やっべ俺様天才?
「佐助…前から思ってたんだけど、アンタこの手の職に着いたら間違いないんじゃない?」
「だねえ。俺様も自分の才能が怖いよ」
「佐助のお店なら毎日通うなあ」
「ほんと?なら菜緒ちゃん専用メニュー作んなきゃ」
ケラケラ笑うたわいもない話。それでも見逃さない、一瞬の表情。
「…でも俺は菜緒ちゃんのだから。側に、いるよ?」
俺と離れる事考えて悲しくなっちゃった?
くつくつと笑ってコツンと額を合わせる。
「…うるさい」
赤くなった目とほっぺたで言われても説得力ないってば。
「俺の可愛い可愛いご主人様は俺にメロメロだねえ」
空になった器をテーブルへ寄せて、よいしょと抱えて膝に乗せる。ちょこんと座った菜緒ちゃんのほっぺは図星とばかりに膨らんでいた。
「アンタだって私にメロメロのくせに」
「あっは。バレてら」
そうなんですメロメロなんです。俺様の中心は菜緒ちゃんで回ってるんです。
だから、
「菜緒ちゃんのものでいたい。菜緒ちゃんのものでいさせて」
だめ?
やんわりと抱きしめて囁く。当たり前でしょ。小さく聞こえたその答えに満たされて、肩に頭を預ける愛しいご主人様の背中をよしよしと撫でた。
…どう?ペットは一日中ずっとご主人様の事を想ってるんだよ。メロメロなほどにね!
これが俺様とご主人様の一日の終わり。
キミなしの世界なんてもう考えられない!