「よう」

「…うげえ」

「あ、政宗いらっしゃい」

「久しいな、菜緒。あとお前んとこの鏡は曇ってんのか?竜神様を目の前にしてあの態度はなんだ?」

「あはは、しょうがないよ」

「そのしょうがないはどっちに対して言ってんだ?おお?」

「…まあ来ちゃったもんは仕方無い、どうせ泊まってくんでしょ」

「察しがいいな」

「その荷物見りゃあねえ。夕餉作る前でよかったよ」

「私もお手伝いする」

「ん、ありがと。優しい子だね。でも大丈夫、菜緒はお客のお相手したげて?あんなんでも来客だからね」

「…はあい」

「んっとにつくづく無礼な奴等だな」



「ふぅー…、俺には及ばねえが旨かったぜ」

「わあ、どれもお代わりしてる人の言い分とは思えないね!」

「はいはい、光栄ですよってね」

「雲外鏡ってのは料理方法まで記憶してんのかい」

「自分で得た知識もあるけど、そういうのに長けた妖を取り込んだ事も要因の一つかもね」

「…おもしれえ」

「政宗?」

「知識は金銀以上に価値がある。器は気に食わねえが中身は誰しもが涎を垂らすだろうよ」

「…まあ、知識がありゃあ大抵の事は出来るだろうしね」

「大抵どころじゃねえ。全部、だ。加えてその器を持つのが神籬ときたもんだ。…知恵持ちもまた集まりやすいわな」

「妖から神まで集まるから。専門色強いけど多岐に渡るそれらを組み合わせて出来る知恵もあるしね」

「ますますおもしれえ。…菜緒、お前俺んとこに来い」

「はあ?」

「へえ?」

「神籬に逆らえる奴はいねえ。存在が絶対の防御だからだ。だがそれは神や妖に対してだけの話だろ。竜神の加護はそこいらの鏡なんか目じゃねえぞ。鏡も知識の器として囲ってやらあ」

「…戯れ言もいい加減にしねぇと封印すんぞてめえ」

「ハッ、やれるもんならやってみな」

「うふふ、面白いねえ政宗は」

「面白い?俺がか?」

「確かに私がいれば何処でも知識は集まるだろうね。でも」

私、政宗のお腹かっさばいて飛び出しちゃうよ。

「だって佐助がいないと息も出来ない」

「菜緒…!菜緒にそんな血腥い事させる前に俺様が血祭りに上げるからね!ちゃあんと助けるからね!ていうかまず拐わせたりなんかしないからね!」

「えへへ、やっぱり佐助が一番だ」

「俺様にとっても菜緒が一番だよ…っ!」

「あう、佐助ぇ苦しいってばあ」

「だって俺様のひいさまが可愛くて仕方無いんだもの!」

「佐助ーぎゅううっ」

「ぎゅぅううううっ!」

「…馬鹿馬鹿しい」


馬鹿馬鹿しい話。




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