「今日はあったかいよ。ね、幸村」

「………」


木の実男の幸村は気温が下がってからというもの、ほとんど動かなくなってしまいました。


「ちょ、重い重い重い幸村重い」

「さむい」


動かない、というのは語弊があるかもしれない。彼は元からそんなに動かなかったから。むしろ暖を求めて大の男が引っ付いてくるもんだから動けない。私が。


「…まあコミュニケーションが取れるようになっただけマシかなあ」

「ましまし」

「あんたが言うの?それ」


ぷすっと笑えば、私の肩に顎を置いていた幸村がこちらを向き、ふっと微笑む。

語彙もそれなりに増えたし、表情もだいぶ豊かになってきたと思う。
しかし、彼にとって「口」は水を補給する器官であって喋る事に重点を置いてないようなのだ。

言葉でコミュニケーションを取ってきた私にとって表情だけで全て読み取るのはなかなか難しい。伝えたいことがスムーズに伝わらない時に幸村は言葉にしてくれる。あとは簡単な単語くらい。


「幸村、手もぞもぞしないでよ。くすぐったいじゃん」

「ふく、なか、ぬくい」

「隙間が出来たら寒いんだってば」

「………」

「あ、無視しやがった」


しれっと服の中に突っ込んできた手は私のお腹に回される。たるんでて恥ずかしいなとか、まず服の中に手を突っ込まれるってなんだよとか、そういうのは早々にどっかいった。どれだけ恥じらっても相手は本能のままに生きてる植物なのだから。


「あー…でもくっ付いてると落ち着くよねー…」

「おちくつ」

「落ち着く。幸村もだんだんあったかくなってきたし…ふぁあ」

「菜緒」

「んー?」

「たね、だす?」

「種…?……っ!?だっ、だめ!出さないの!」


結論、やはり相手は本能のままに生きてる生物でした。


あったかくなったきたのは別の理由もありました。



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