夕食後の気だるくも満ち足りた時間。絶えず映像を映し出すテレビを見る気も起きなくて、隣に座っていた佐助の肩に頭を置いた。左腕に触れる体温。

佐助の体温はあんまり高くない。男と女の違いなのか佐助は寒がりで、もっとあったかい体温になりたい…とぼやいているが、高過ぎない佐助の温度はいつだって気持ちいいと私は思ってるんだけどな。

すり、と肩に頭を擦り付けるとお尻を少し前にずらして浅く座り直してくれる。

ちょうどフィットする位置にまで下がってきた肩のくぼみに頭を置く。佐助のこういう然り気無い優しさはくすぐったい。

ありがと、と言った顔も自然と綻ぶ。細められた目はふにゃふにゃしたものではなく、男の、愛しいものを見る目で。

そんな目で見つめられちゃさすがの私だって照れる。ばか、いつものわんこみたいな笑顔はどうしたのよ。


「菜緒ちゃん、かわいい」


ゆるりと弧を描いた唇が近付いてきて、ふに、と瞼に押し付けられる。瞼にいくつか唇を落とし、最後はまなじりに軽く口付ける。

また佐助の顔が動いたのを感じて自然に閉じていた瞼を薄らと開けた。薄い唇が鼻筋をなぞり下りていく。上唇をやんわりと食まれて、ゆっくりゆっくり二つの唇が重なった。

触れていた左腕、床についた左手は私より二回り大きな手に覆われる。傍目から見れば細く綺麗だな、と思う佐助の掌は固くて、どんなに綺麗でもやっぱり男なんだなと実感する。

絡められた指がきゅうと締まり、無意識にほっとしている自分がいる。手を握られているというのはどうしてこんなに安心するんだろう。


重なった唇を薄く開ければにゅるりと進入してくる舌。より深く繋がったそこをあむあむと動かすものだから、まるで口を食べられてるみたい。貪られる、ってこんな感じなのかしら。

ン、ふ、と鼻から抜ける息がリアルで急に恥ずかしくなる。一層顔に熱が集まるのを感じていると不意に佐助の唇が離れた。熱を宿らせた目でじいと見つめ、指先で頬をなぞる。


「ねえ、それさあ、俺様のせいだよね?」


いきなり何を聞いてくるのかと少しだけ睨む。でもそんなの僅かな抵抗にもならなくて。にへ、とだらしなく笑う佐助を見て、精一杯の反抗が肯定になっていた事に気付いてしまった。


「だよね」


たまんないね、そう呟いた佐助に腰をさらわれる。ご対面する天井と私を見下ろす佐助。

熱を孕んだ切なげな目に子宮がきゅうんと鳴いた。

…ああ、もう、ばか。ずるいのよ。

全身を覆う心地好い圧迫感に絆されてしまうのも時間の問題だ。




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