まるで砂糖菓子のようだと思った。
色素の薄い髪は太陽の光を受けるときらきら光って、おれを見てふんわりと笑った笑顔はとても甘い。
「ジロちゃん」
抱きしめたら崩れてしまいそうで、一度含めば二度と離したくなくなりそうで。
必死にそんな気持ちを抑えようとして、眠くもないのに寝たフリして。
「寝ちゃったの?」
耳に甘く響く声にうっとりしながら、つい開けてしまいそうになる瞼をしっかりとくっつける。
ふわり。
小さな風が甘い香りと一緒におれの髪をなでる。
「かわいい…」
なんにも知らないんだきみは。
本当はおれは寝てなんかなくて、必死に目を閉じてるだけで。
こんなにもこんなにもきみが好きなことを。
「ふわふわね」
ああ、またそんな無防備に。ほんとに何も知らないんだね。
おれは男で、羊じゃなくて狼にもなり得るってことを。
「ジロちゃん…」
その一言でおれはきみの手をとり、指先に口づける。
びっくりしたその顔も、真っ赤になったそのほっぺたも。
「かわいいね」
そう言って、初めて口にした砂糖菓子のような唇に、おれは子どものように夢中になった。
【砂糖菓子のきみに】
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