地べたに座りこんでパソコンを打つ後ろ姿。尋常ではない速度でキーを打つ音に紛れて、猫背気味の背中を目指してそろそろと近付いていく。

気付いているのか、いないのか。もちろん後者など有り得るはずはなく、それでも何も言わない辺り許してくれたのだろうと都合よく解釈することにした。


「クールール、はかどってる?」

「ンな事聞くんなら邪魔すんなよな…」


極力明るくかけた声もきっぱりと斬り捨てられる。しかしそれを聞こえなかった事にして、素早く後ろを陣取り腕を回した。

スベスベでなめらかな肌。程好く潤ったそれに私は初めて会った時から虜になってしまったのだ。


「クルルークルルーかーわいいなー」


ご機嫌で歌いながら彼の腕や腹を撫でまわす。


「おいおい…これセクハラってやつじゃネェの」


そう言いながらも特に嫌がる素振りを見せず大人しくされるがままのクルルがまた可愛くて、私の頬は緩みっぱなしだ。

小さな彼の頭に顎を乗せて、パソコン画面を覗く。高速に下がっていく画面や内容を理解出来るはずもなく、それをクルルも分かっているから何も言わない。

しばらく画面を見つめていたが、段々目が疲れてきて瞼が重くなってきた。そういえばクルルはずっとパソコンと向き合ってるけど疲れたりしないのだろうか。



「…楽しい?」


思わず出た言葉にクルルはいつもの笑いを返すだけだった。(つまりは楽しいって事だよね)


どんどん重さの増す瞼と格闘していると、おもむろにクルルがもたれかかってきた。


「…勘違いすんなよ…ただの休憩だ」


疲れたわけじゃないゼェ、と言ってぽすんと頭を寄せる。頭の置かれたそこはちゃっかり胸の間だったりするけど、クルルだし、可愛かったからそのままにしておいた。

遠慮なくもたれかかってくるクルルの手を取って、指をもてあそぶ。ぷにぷにした小さな手がまた可愛らしい。(これが高速でキーを打つんだから信じられない)


でも私が一番愛してやまないのは、


「ねぇクルル、ちょっと立って」

「あン?なんでだよ」

「おしりが見たいから」


恥じらいもクソもなく答えられた言葉にさすがのクルルも一瞬固まった。


そう。私が一番好きなパーツ、それはケロン人のおしりだ。ぷりんとカタチよく上がったおしりは本当に可愛くて、その角度は黄金比率と言ってもいい。そんなおしりをフリフリ歩く姿はこの世に平和をもたらすと言っても過言ではないと思う。本気で思う。


「ここまで堂々とセクハラされちゃ、いっそすがすがしいな」

「でしょう?だから立って。見せて」



おお、珍しく機嫌がいいぞ。この調子なら触らせてくれるかもしれない。


「やだね」


…だよね。


「あいにく尻を見られて喜ぶ趣味はないんでね。そんなに見たいんなら隊長なりなんなりの所へ行ってきな…」


くーっくっくっく、とお馴染みの笑い声を上げて再びクルルはパソコンへと向き直る。離れた頭が寂しい。(身体はまだ私が抱いてるんだけど)


今までの経験からして、これ以上彼が相手をしてくれる可能性はゼロに等しいので見切りよく諦めるしかない。

じゃあ私のこの願いを叶えてくれるのは誰だろう。ギロロ…は絶対に触らせてくれないし、タママは可愛いけど尻尾があるんだよね。ドロロもある意味触らせてはくれないだろうし、やっぱりここは

「…ケロロかな」


ぽつりと呟いて、クルルの邪魔をしないようそっと腕をほどき、身体を離す。そしてそのまま出ていこうとしたその時。


「ちょっと待ちな」

「へ?」


振り返った瞬間、いきなり出てきた機械に身体を拘束される。


「えっ、ちょっ、何!?」

「俺様の身体を散々もてあそんだんだ…それ相応のモノは払ってもらうゼェ…」


もちろん身体でな…と笑う彼に、私は明日の朝日を無事拝めるかどうか不安になった。



【妬いたって素直に言えばいいのに!】




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