腕の中にいる、あたたかくて、やわわかいあきちゃん。くっついてる体からおれさまのとあきちゃんのドキドキがいったりきたり。

いきがしにくい。むねがくるしい。あたまがあつい。しんどい。

でも、はなれたくない。

最初は、すっぽり包み込めてしまうあきちゃんの小ささにびっくりした。いつもおれさまをぎゅうと抱いてくれていた腕はこんなに細かったっけ。肩だって、背中だって、ちょっと力をいれたらそのまま壊れてしまいそう。

こわい。こわいよ。もしあきちゃんが壊れちゃったら、おれさまのしんぞうだってきっと壊れちゃう。

でもね、腕があきちゃんをぎゅっとしちゃうの。手があきちゃんをはなしたくないっていうの。
鼻があきちゃんのにおいをかんじたいって、耳があきちゃんの声をききたいって、口が、


「…あきちゃん…」

「……ん、」


ゆっくり返事をしたあきちゃんは眠たいのか、もぞもぞと腕のなかから顔をのぞかせた。


「どうしたの…?」


ふにゃ、と笑って背中をぽんぽんとたたく。だけどやっぱり眠たそうな目に、うにゅ、とちゅうをした。

いつもあきちゃんがしてくれるんだ。眠たいのに眠れなくてぐずぐずしちゃうときにちゅうしてもらうと頭の中がほわってして、ぐずぐずがウソみたいに治っちゃう。あきちゃんのちゅうはあったかくて嬉しくて安心するの。

おれさまもあきちゃんに安心してもらいたくてちゅうをした。

あきちゃんはうふふと笑って、ゆっくりゆっくりおれさまの背中をたたく。わかってくれたのかな、あきちゃんすごくやわわかい顔してる。おれさまもちゅうしてもらったとき、こんな顔してるのかなあ?

背中のとんとんが消えて、腕の中が少しだけ重くなる。すうすう寝息をたてるあきちゃんはかわいくて、なんだかちいさいこみたいだ。かわいい。うれしい。すき。すき。すき。あきちゃんがすき。


「………すきだよぅ……」


しらないうちに勝手に口が言ってた。すき。だけどなんだかちがう気がする。
だんな、もとなり、こじゅろさん、ちかちゃん、まさむね、たいしょうだってすき。その中でもあきちゃんがいちばんすき。でもすきじゃない。みんなとちがう「すき」なの。でもなにがちがうかわからないよ。


「…あきちゃんだけにしかおもわないもん、あきちゃんがおしえてくんなきゃおれさまわかんないよぅ…」


あきちゃんの声がききたい。あきちゃんに「さすけ」って名前をよんで、ぎゅうしてもらいたい。


「さすけがいちばんすきよ、だいすきよ」っていってもらいたい。


鼻の奥がつんとして、目がじんわり熱くなる。どれだけ名前をよんでも足りない。どれだけすきっていっても足りない。

あきちゃんだからこんなに苦しいのかな。
でもね、これはあきちゃんにしか治せないっておれさまわかってる。だから苦しいけど、苦しくないんだ。

もう一度、あきちゃんのおみみに「すきだよ」っていって、そのままお口にちゅうをした。

おれさまの口をつけるとふんわりしてて、軽く吸いついてから離すとちゅっ、と音がした。ぷる、とふるえるくちびるを見た瞬間、背中がびりびりして、ぶわりと尻尾がふくらんですごくびっくりした。

でも、いやじゃなくて、むしろもっと感じたくて、何度も何度もちゅうをする。

あきちゃんのくちびるはふにふにで、ぷるぷるしてた。おれさまは何度も何度もちゅうをした。

あきちゃんのくちびるは、あたたかくて、やわわかくて、あまずっぱいあじがした。




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