お風呂上がりのほこほこした佐助を膝に乗せて、髪を拭く。ドライヤーが苦手な佐助くん。少しでもドライヤータイムを短縮するためにタオルドライは念入りに。

ぽてん、ぽてん、とゆっくり揺れるふかふかのしっぽ。彼の気持ちを表すしっぽはいつだって正直。ぽてん、と私の太ももに触れるたびに、するりと撫でてまた揺れる。
佐助が嬉しそうにしていると、つられて私も嬉しくなってしまう。嬉しい気持ちは伝染しやすいのだ。


「今日は何して遊んだの?」

「きょうはねえ、おはなのみつさがしした!だんなさがすのじょうずでね、おれさまともとなりもがんばったけど、ぜんぜんかてないんだよ!」


くやしい!と、くちびるを尖らせてぽこぽこ怒る佐助。でもしっぽは変わらずに一定のリズムを保っている。
なだめる気持ちを込めて、ことさら優しく髪を拭くと、すぐに彼の口元には笑みが浮かんでいた。

んふんふ、んふふ、と含み笑い。いつぞやに流行ったキノコを収穫するゲームのキャラみたいだ。


「ねー、あきちゃん」

「ん〜?」

「おれさまのひみつおしえたげよっか?」

「あら〜いいの?教えてー」

「じゃあおみみかしてっ」


そう言うやいなや、ぱっ、と体を起こしてこちらに向き直る。
膝立ちになって、ぽすりと上半身を私に預けた。ほとんど乾いていた髪の毛が、ふわりと揺れて、同じシャンプーの香りが広がった。
佐助は、ちょうどいい高さにある私の肩口にあごを置いて、くふくふと笑う。

「早く教えてよ〜」と目の前でふよふよと揺れるしっぽの付け根をふにふにすると「やぁん」と甘ったるい声。
これが聞きたくてつい、いじめてしまうのは仕方のないことだと思う。佐助は何をしてもかわいいのだ。


「えっと〜、えっとね〜」

「うん」

「んー」


私の胸元に置いた手をにぎにぎしたり、視線を泳がせたりして、もじもじする佐助。珍しいその姿。早く言わないとまたイタズラしちゃうぞ!

むくむくと湧いてきていた私のイタズラ心を知ってか知らずか、佐助はついに意を決したのか耳元に口を寄せる。


「あのね、おれさまのいちばんだいすきなひと、あきちゃんなんだよ…っ」


まさかそんな答えが返ってくるとは思ってもみなかったので、思わず目をぱちくりさせてしまう。
まるいほっぺを赤くさせてもじもじと、こちらの様子を伺う佐助くん。
「いっちゃった」と小さなお手々で口を隠して照れ笑い。


「あとね」

「うん?」


まだ続きがあるようで、再度口を寄せてきた佐助に耳を近づける。


「あきちゃんのいちばんだいすきなのって、おれさまだっていうのもしってる!」


にしし!と歯を見せてめいっぱい笑う佐助に、愛おしさで胸がいっぱいになってしまって、もたれ掛かっていた体をぎゅうと抱きしめる。
「きゃうん!」と佐助が鳴いたけど、ごめん!今、手加減できそうにない!


「…ばれちゃってたか!」

「ばればれだよー!」


ぎゅうぎゅうとお互いを抱きしめて、くふくふと笑いあう。


まっすぐに気持ちをぶつけられて、受け取って。
そしてまっすぐに気持ちをぶつけて、受け取ってもらって。

ああ、こんなに単純明快なことなのに、なんて心地の良いことか!


佐助、佐助、だいすきよ!


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