「おや猿飛くん。ほっぺたに紅葉がついてるよ」
「春だってのにねえ」
「そうさねえ…。君の場合は春だから、というのもあるのではないかね?」
いや、年中無休か。きしし、とおおよそ女の子らしくなく笑う。笑みの種類で言えば悪い顔、とでも言おうか。
楽しんでいる節のある彼女を薄く睨めば、人聞きの悪いと心底驚いたように手の平を振って見せた。
「同じ事を何度も繰り返す君にほとほと呆れ果て、且つ面白味も薄れてきたので自主的に楽しもうと努力しているだけだよ」
「そりゃあ悪うござんした。てかさっきから何、その口調。その口調が努力?頭でも打ったの?それとも春だから?春だからなの?いや、君はいつもそうだったね可哀想に…」
「うわっ猿飛むかつく」
「自分から始めておきながら速攻ルール投げるのってどうなの」
普通に会話すんのも飽きたしちょっと違う感じで話してやろうとでも思ったのだろう。言わなくても分かってしまう自分の聡さが怖い。
彼女の始める事に意味なんてないしまず意味も分からないが、分からんなりに付き合ってみれば全くこの女は…。
「おいこら全部口から出てるぞ」
「あらやだ恥ずかしい」
「出すのは下半身と下心だけにしとけ」
「いやそれは出してちゃダメでしょうよ」
「いつも出してんじゃん」
「いざという時しか出してませんー」
「お前本当に最低だな!」
「うわあ、すごくいい顔で言われたあ」
あはは!と爽やかに笑いながら背中をバシバシ叩かれる。こんな会話、女の子だけじゃなく旦那達にだって出来やしない。ある意味特別な存在だよなあと苦笑しながら、いてぇっつーの、と丸いおでこに一発デコピンをお見舞いしてやった。
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