十万打企画 | ナノ


▼ トミーと後輩(学パロ)

ぶちぶちと嫌な音をたてて、ボタンが四方八方へと飛び散る。

「あ、ゴメン」
「なっ、あ…とっトミー先輩いいいいいい!!」

形だけの謝罪をする元凶である先輩に対して、私は叫ぶことしかできなかった。



トミー先輩とは家がご近所で、幼稚園からの付き合い、つまり所謂幼馴染という関係だ。そんなトミー先輩は性格がすこぶる悪い。授業サボるわ後輩をパシるわ他校の生徒と喧嘩するわ私をからかうわ問題起こすわ、彼のせいで散々な目に遭ってきた。更にたちの悪いことにこの先輩、我が両親には猫を被っているから、両親は先輩の事を「自分たちの娘の面倒を見てくれるいい子」としか認識していない。とんだ詐欺である。
さて今日はそんな先輩の卒業式。あの先輩が無事卒業できるなんて…と思わず口に出したのがいけなかった。トミー先輩は無残にも私のブレザーを引っ掴み、左右に引っ張った。彼は女子のように可愛らしい顔をしているけれど、腕力が恐ろしく強い。当然私のブレザーはその強さに耐え切れず、ボタンが外れてしまった。なんて人だ!!先輩と違って、私はあと一年この制服にお世話になるというのに。直ぐにしゃがんでボタンを探すと頭上から「うわ、犬みたい」と馬鹿にしたような声が聞こえた。ああ、実際馬鹿にしているのか。…元凶は貴方だというのに。無視してさっさと見つけよう、んで帰ろう。そう考えながら倉庫と体育館の間にジャストインしたボタンを取ろうと必死に手を伸ばす。が。

「高校生で青の水玉ってどーなの」
「うわああああああああっ!!?」

見られた、先輩にスカートの中見られた!「ガキくさっ」貴方の評価なんて知らないよ!

「へっ変態!」
「はあ?勝手に尻突き出して見せてきたくせに何人の事変態扱いしてんの」
「見せるつもりはありませんでしたよ!」
「どーでもいいから、さっさとボタン探したら?」

くそ、元凶のくせに…でも先輩の恐ろしさを知っているから、下手に口答えできない。大人しくボタンを探すとしよう。



飛び散ったボタンは三個、そして私の手の中にあるボタンは二個。あと一個がどうしても見つからない。さっきから一時間も探しているのに何故?外はまだ明るいけど、一向に見つかる気配はなし。先輩は帰ろうとも探そうともしない。

「見つかんねーの?」
「……はい」
「ふーん、ドンマイ」

…いつか絶対に先輩を殴ろう。先輩の二やけ顔を横目に、そう決心した。さて、ボタンどうしよう。その問題に対して解決策をくれたのは、意外にも先輩だった。

「じゃ、ボクのボタンやろっか?」
「え…でもそれ、男子用じゃ」
「見た目も色もそんな大した差はないデショ。もうボクには必要ないしネ」

確かにボタンは大差はない。よくよく見たら違うと分かる程度だ。それにほぼ毎日ボタンを使用しない先輩にはあってもなくても同じものだし。でも…うん。あの先輩から貰うのか。タダでは済みそうにないんだけどな。いやでも、見つからないしな…

「ください」
「ん、イーヨ」

そう言ってぶちり、とかっこよくブレザーの第二ボタンを引き千切った先輩、あれ。どうして真ん中のボタン?差し出されたボタンを受け取りつつも、頭の中は混乱している。そんな私にお構いなく、トミー先輩は背を向けて帰ろうとする。その背中にどう声をかけようかと考えていると、こちらを見ずに先輩が右手を振った。
その手の人差し指と中指に挟まれているのはボタンで。


「代わりにお前の第二ボタン、貰ってくネー」



その言葉の意味とは如何に。
一人残された私は、隣に住んでいる先輩に、これからどんな顔をして会えばいいんだろうかと悩むはめになった。

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