十万打企画 | ナノ


▼ ゼブラ連載の番外編で理性がとびかけるゼブラさん

ホラー映画、一緒に見てくれませんか。
名前に、土下座して頼まれた。


「土下座すんな、頭上げろ。理由を言え」

「は、はい…この前、トリコさんがホラー映画のDVDを貸してくれたじゃないですか」

「ああ…お前がびびってたあれか。随分と昔の話だな」


まだ名前がオレの監視だったころの話だ。トリコが暇だろうからと貸してきたホラー映画のDVDを二人で見て(ん、トリコもいたか…?)名前がやたらとびびっていた。どうやら名前はホラーが苦手らしい。


「いつまでも怖がってたら駄目だと思って…」

「で、克服するために見るってか。それなら一人で見たほうがいいだろうが」

「む、無理です!一人で見たらそれこそホラーです!だからお願いします!」

「わあった、見てやるから土下座は止めろっつってんだろうが!!」


何でテメェは仮にも恋人に土下座してんだ!




「昼に見んのかよ」

「夜は流石に怖くて…昼は明るいから、いいかなーと思いまして」


名前らしくて少し呆れるが、そういう所が嫌いじゃない。だが、既にDVDをセットする時点で震えてるんだが。大丈夫なのか、こいつ。
そうして、真っ昼間のホラー映画観賞が始まった。



序盤の幽霊もゾンビも出てきてない頃から既に涙目になってた。もうこれ、諦めたほうがいいんじゃねぇのか?克服した様子が想像できないんだが。
どうこいつに諦めるように説得するか。そう考えていた時、


突然画面に血塗れの女のアップが映った。



「っきゃあああああ!!」


名前はそう叫んで、抱きついた。オレの腕に。


「っ…!?」


今度はオレが叫びそうになった。言葉を発しそこねた口をパクパクと開閉する。
ビビりな名前からスキンシップの類いをされたことがないからか、ただ腕に抱きつかれたというだけでやけに驚いてしまった。そんなオレの心境を知らずに、名前は恐怖に耐えるためか更に体を腕に密着させようとしがみつく。嫌でも腕に当たる女特有の柔らかさに、何かがぶちぶちと音を立てた気がした。…今の状態は、据え膳ってやつじゃねぇか。なら――

いや、駄目だ。その考えを頭から振り払おうと拳に力を入れ、握り締める。最初に「映画を見る」と約束したんだ。それを破る真似だけはしたくねぇ。これはオレの信念でもあるし、更にオレに対する信頼もかかっている。もし今下手に行動したら、暫くは会話どころか同じ空間にいることすら気まずくなる可能性が高い。それだけは何としても避けてぇ。
いやだが、しかし。今の状態をそのままにするのは惜しい。だが――



とりあえず、この拷問にも幸福にも等しい時間が早く過ぎてしまえ。


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かぼちゃ様、この度はリクエストありがとうございます。そして遅くなってしまい、本当に申し訳ありませんでした。
素敵なリクエストに思わずニヤニヤしてしまったのは良い思いでです←

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