十万打企画 | ナノ


▼ トミー様でハードな夢

*キチ&死ネタ注意
*スター様視点


トミーロッドには気に入っている部下がいる。名前という女で、彼女はトミーロッドに恋慕の感情を持っていた。本人は隠しているつもりだったようだが、その感情に周りはおろか、トミーロッド本人にすら気付かれた。あのトミーロッドのことだ、どうせ散々馬鹿にし利用し弄ぶのだろう。そう思っていたし、実際にも名前は毎回の如く弄られていた。ただ、予想と反した所は、その弄りに悪意は少しも感じられなかった。弄るというよりは、からかうといったほうが正しいような、とても軽いものだった。名前が髪を切れば「ボク長い髪のが好みだったのになー」と言い、実際に髪を伸ばせば「微妙」と批評し、「ちょっと馬鹿な所がある子好きだよ」と言って喜ばしたら「お前はちょっとじゃなくて大馬鹿だろ」と爆笑する。そうやって毎回からかわれながらも、惚れた弱みというのか名前はトミーロッドから離れようとはせず、むしろ更に接近しだした。「あの弄られるのがいいんです!」と満面の笑みで言われた時には、目を覚まさせるべきかと正直悩んだ。だがグリンパーチから「面白いんだからいいじゃねーかよ〜」と止められ、あろうことかトミーロッドに「別にイーじゃん害ないし」と言われ、結局様子を見るだけに留まった。

最初は面白くてからかっているようだったが、暫くしてからトミーロッドの対応がそれだけではなくなった。

「アゲル」
「え、マニキュアですか?色がどす黒いですねー…」
「それ、ボクが使ってるやつ」
「ええっ!!」

ホラ、と名前に爪を見せ、その言葉が本当であることを証明する。途端に名前の顔はだらしない顔になり、宝物でも頂くかのように仰々しく赤黒い塗料の入った小瓶を受け取った。

「あ、あああああありがとうございます!家宝にさせていただきますね」
「は、何言ってんの?付けろよ」
「いやだって、勿体ないですし…」
「そしたらまたあげるよ。何、ボクとお揃いが嫌なわけ?」
「滅相もない!明日と言わず今日から使わせていただきます!」

その日、名前は本当にその日から貰ったマニキュアを使い、浮かれているのをトミーロッドに散々笑われていた。
マニキュアを与えたのは奴の気紛れだろうと思ったが、それからも何かしら物を与え、喜ぶ名前を馬鹿にするトミーロッドの姿を何度か見かけることになった。別に特別珍しくも高価でも無い物だったが、弄るためだけに物を与えるような性格ではないと知っていたため、奴は名前を気に入っているのだと思った。あのトミーロッドにもそんな感情があるのかと驚いたと同時に、僅かながらも微笑ましいと感じた。
れからもこのようなやり取りが続いていくのだろう。そう思い込んでいた。






暫くしてから、名前に頼みたい仕事が幾つかできた。だが、本人をいくら探してみても見当たらない。自室にもいなかった。料理長に聞いてみたところ、あいつに今のところ仕事は出していない、出かけるという話も聞いていないから、本部の何処かにいるはずだ。そう言われ、本部の者に名前を見かけていないか、もしくは心当たりのある場所を知らないか。そう聞くも返事は全て「見かけていない」「知らない」だった。ならば何処にいる?そう考え、あいつがいそうな場所の心当たりが一つだけ思い浮かんだ。

赴いた先は、トミーロッドの自室。そういえばトミーロッドにもまだ会っていなかったな、と思いつつノックをする。返事はない。何度かノックをしても反応がなく、不在かと思ったら、虫の鳴き声と肉を裂くような音が微かに聞こえてくる。居留守か。料理長から仕事の件で来たとでも思ったのだろうか。そう思い扉を開け、呆然とした。




まず最初に気付いたのは、鼻を刺す腐敗臭と鉄臭さだった。その後に、床一面の真赤な水溜まりが視界に映った。その水溜まりの源泉であろう肉体はもはや原型を留めておらず、元が何だったのか分からない有様だ。それに集り貪る虫達。そしてその水溜まりの中央でトミーロッドは、しゃがみながらその有様に熱の籠った視線を向けていた。その、あまりに異常な光景に圧倒されそうになった。
勝手に入室した私の存在には気付いているようだが、一向に反応しない。此方を見ようとも声をかけようともせず、ただ貪られている様を眺めている。熱中しているようだったので、早急に立ち去ろうと用件のみを伝えた。

「トミーロッド、名前を知らないか?」
「ん、ココだよ」

間髪入れずにココ、と指差した場所には、虫が貪っている肉塊。

「…冗談はよせ」
「はぁ?冗談って、何を根拠に言ってんの」
「お前は名前を気に入っていただろう。殺すとは思えん」
「過去形にしないでくれる?今でも気に入ってるよ。こんなになってもネ」

心外だとでもいうように声を僅かに荒げ、咎められる。それでやっと本当だと理解した。今も虫に食い散らかされているこの肉塊が名前なのか。意味が分からなかった。現状も、トミーロッドの発言も。


「……何故殺した」


全くもって予想がつかなかった。トミーロッドがどんな理由で名前を殺したのか。その様子を何故こうも楽しげに眺めているのか。どんな理由を言われても納得できないが、それでも尋ねずにはいられなかった。


「何でって、気に入ってるカラ」


至極当然のことのように、あっさりと言ってのけた。それは理由になっていない。気に入っていたのなら、どうして殺すという結果になるのか。
今まで何度もトミーロッドは部下を殺してきた。
気に入らない奴なら「気に入らないから」
どうでもいい奴なら「暇潰しに」
仕事ができる奴でも「つまんない」
気に入っていた奴でも「飽きた」
そのどれでもない理由に、一体どんな意味が込められているのか。それはこの光景と同様に、異常なものだった。


「可愛い可愛いボクの名前がボクの可愛い虫達に皮膚を裂かれ肉を抉られ内臓を食い破られ骨を砕かれて最期にはこの血溜まりだけ残して死んでいく様を見るのが、もう楽しくて楽しくて!!」


熱に浮かされたように、普段より幾分か高い声で叫ぶ。視線は肉塊から外そうとしない。私の方を見向きもしない。
つまり、虫に肉体全てを食われ、消えていく名前を最後まで見るために殺したというのか。
興奮からか喜びからか、気分が高揚しているのは全身から分かった。


「もう会えなくなるのはヤだったけど。でもだからこそ、この一回きりの楽しみが最高なんだよねー」



トミーロッドには名前という部下が「いた」。
彼女は好意を寄せていたトミーロッドに、本当に気に入られたが故に殺された。
果たして彼女はトミーロッドのように、この行為に幸せを感じることはできたのだろうか。

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