十万打企画 | ナノ


▼ 子供→トミー

「とみぃ、とみぃー!」
「あーはいはい。ったく、何だよ」
「あのね、これあぐる」

差し出されたちっせぇ手の中には、紫のまるで心臓にも似た形のモノ。持っている手とはとても不釣り合いな物だ。あと「あぐる」じゃなくて「あげる」だよ、面倒だから教えてやらないけどね。

「…毎回毎回何処で見つけるのさ、お前」
「?」
「ま、いーや。アリガト、名前」

そう言って希少昆虫の卵を受け取る。こいつからこういったモノを貰うのは何度目だろうか。もう覚えていない。

ソーンウッドに捨てられていた女の赤ん坊。一体誰がこんなトコに捨てたんだと一時は大騒ぎになったけど、それは直ぐに治まった。代わりに別の騒動が起きた。そのガキ、何故か猛獣に凄く懐かれた。試しにグリンのジャックエレファントの前に置くと、そのガキに甘えだしてしまった。他にも色々試してみたところ、どうやらこのガキ、食運が異常にあるらしい(それを聞いたスターがものっそい反応してて思わず噴いた)。利用価値はあると判断して、そのガキを育てることになった。それは良かったんだけど、世話はジョージョーがするということに決まったはずなのに、何故か皆そのガキを甘やかすようになって、料理長なんかそのガキに命名してしまった。皆気持ち悪いくらいでれっでれ。もしかしてこいつ、猛獣だけじゃなくて人間も懐かせるんじゃ…成長したら尻に敷かれるんじゃねーの。流石にボクはそうはなれなかった。だってガキなんて面倒だし。なのにこの名前は、よりによってボクに懐いてしまった。そのせいでボクが料理長にどれだけ仕事を押し付けられたことか!ボクは何にも悪くないっつーの。別に餌付けたわけでも優しくしたわけでもないのにさ。何でボクなんだろ。ガキに好かれる要素はないんだけどな。
面倒だし妬まれるし、名前の相手をするのは気が進まないけど、こうやって貰える希少昆虫の卵が貰えるならチャラにしてやるよ。

「とみぃすきー」
「ん、アリガト」
「とみぃは名前のことすき?」
「…嫌いじゃないよ」

これは本当。嫌いじゃない。でもぶっちゃけ好きでもない。そんなに騒ぎはしないし良い子だけど、だからといって好意なんて馬鹿らしいものは持ち合わせちゃあいない。そんなボクの言葉の意味を知らずに、名前はただ嫌われてないことを喜んでる。なんて単純、子供みたい。あ、実際子供か。

「とみーろっどだいすきー」

返事の代わりに小さな頭を頭を撫でてやった。

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