「あ」

今日も私はメロンパンを手に入れることができた。何度食べても飽きることのない極上のメロンパンを片手に、勝利の気分(なんてったってトリコやゼブラ、その他もろもろの敵からメロンパンを勝ち取ったのだからね!)に浸りながら窓の外を眺める。雲一つもない晴天、かといって日差しはそんなに強くはなく。外で食べてる人もいるのかなーと思い視線を下げると、鮮やかなピンクが目に入った。一瞬何だと思ったけど、なんてことはない、人だ。でも只の人ではない。ピンクのおかっぱヘアに学ラン。そんな奴はこの学校に一人しかいない。三年のトミーロッドだ。学年は違うし会ったことも見たこともなかった人物だけど、私は奴のことをよく知っている。何せ彼はトリコと校舎を半壊させるほどの乱闘をした人物なのだから。他にもスタージュンやグリンパーチといった問題児(そんな生ぬるいものじゃないけど)とつるんでいて、もはや化け物レベルの力を持ち合わせている先生達ですら警戒するほどの奴等だ。知らないわけがない。
そんなトミーロッドを見ているのは危険だ、もし目が合ったら……考えるだけで恐ろしい。ぶるりと背筋が震えた。早く視線を逸らそう。そう思ってたのに、視界にもう一人入ってきて、思わず視線を元に戻してしまった。


「ごめんトミー、待った?」
「ん、別に」
「四限退屈だったから寝ててさ、そしたら寝過ごしちゃった」
「居眠りが遅れた原因かよテメェ」
「いひゃいいひゃい」


女子だ。チャラチャラしてなくて、大人しそうな感じの可愛い子。……あ、確か彼女、隣の不良クラス唯一の女子!あの不良三人とよくつるんでいるらしいけど、彼女は常識を持っているし良い奴だともトリコから聞いた。二人の会話を聞く限りでは、どうやら彼女は寝過ごしてトミーロッドを待たせてしまったようだ。それが奴には不満だったんだろう。彼女は頬を抓られている。でも痛いと言ってはいるけれど、そこまで頬は伸ばされていないし彼女は余裕そうな表情をしている。手加減しているのか?あのトミーロッドが?まさか。その考えを打ち消していると、トミーロッドは飽きたのか満足したのか、頬から手を放した。


「あー、さっさと食べよう。ボクお腹すいてるし」
「そうだね。あ、はい弁当」
「アリガト」


差し出された弁当を受け取るトミーロッドの表情は、凄く優しげで。唖然とした。
いやだって、話で聞いていたトミーロッドという人物は自分勝手で暴力的で気まぐれで下種でクズで最低で人を見下していて、あんな、あんな表情をする人だとは思えない。見間違いかと思い目を擦ってもう一度見てみるも、既に二人ともこちらに背を向けていて顔は見れない。


「あーっ、あれってトミーと彼女さんだし!」
「っうわぁ!!」


いきなり背後からした声に、椅子から転げ落ちた。痛い。非難の視線を送るも、リンちゃんは私なんぞ気にも留めないでトミーロッドとその彼女さんを見てい、……彼女?


「なんか晴天似合わないしあの二人ー」
「え、り、リンちゃんっ、あの二人って付き合ってんの!?」
「え?そーらしいけど」
「あ、あのトミーロッドとって、遊ばれてるのあの子!?」
「ウチも最初はそう思ってたけど、本気らしいよ?トリコがそう言ってたし!」


本気って何が。気持ちがか。
トリコトリコと煩いリンちゃんを無視して、もう一度彼らを見る。一方は有名な不良、もう一方は普通の子。そんな明らかに不釣り合いな彼等なのに、後ろ姿だけでも確かに幸せそうな普通のカップルに見えた。例え不良でゲスでも、ちゃんと人を愛する感情を持っているんだなあ。
ふと、隣の不良クラスの奴等もそうなんだろうか、という考えが頭を過った。おっかなくて今まで関わりを避けてきたけど、もしかしたら仲良くなれるのかもなあ、なんて考えながら最後の一口を口に放り込んだ。うん、美味い。


「恋愛って、人を変えるんだね…」


感慨深いなあ、恋愛。


昼休みは発見

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