「ななし、待てやぁああぁあ!!」

「ひぃい…!」


背後から聞こえる怒声と、階段を飛び降りた音と、廊下を走る音。それらの音全てが恐怖を感じさせるには十分で、足が走りながらも若干震えているのが分かる。音が段々近付いてくるけど、恐くて後ろを向けない。もうやだ。
ゼブラはチョーシに乗ってる奴が嫌いだ。最近ずっと私が誰よりも早く教室を出て購買でお目当ての物を買う行為を「チョーシに乗った」と言って怒り、現在に至る。別に追いかけられているわけではない。ただ目的地が同じなだけだ。でも、あのゼブラが私の後ろから走ってると思うと……死ぬ。
未だに私は彼の「チョーシに乗る」という意味がよく分からない。ただ私はメロンパンが食べたいだけなのに、それのどこがチョーシに乗ってるというんだ!!


「ちょっと、廊下をそんなに走っちゃ駄目でしょ!」


あ、あれはラブ先生…ナイスタイミングっ!


「ラブ先生ゼブラ君が怖いですううううう!!」


力一杯に叫んだ。
ラブ先生はゼブラが好きだからね。彼の存在を明確にして伝えれば、先生の注意は必然的にゼブラに向かう。実際上手くいったようで、ゼブラはラブ先生に大人しく引き留められていた(何だかんだでゼブラは女性に乱暴しないからなぁ…)


「ああん!?退け!!」

「ちょ、ゼブラちゃん待ちなさい!駄目でしょ廊下走っちゃ!」

「それはあいつも…」


はっはー!!勝った!!別に競争していたわけじゃないけど、何か勝った!よし、後はこの角を右に曲がるだ、



「、ぶっ」

「わっ!?」


頭から何かに突っ込んだ。
で、倒れた。


「いっ、…てー」


人だ。やばい見知らぬ男子生徒にタックルかましてしまった。


「す、すみません!大丈夫ですか?」

「、あ…」


怪我をしてないか見てみると、左手の甲に一線の細い切り傷が。倒れたときに壁の角とかなにでも引っ掻けてしまったんだろうか。うわわ、タックルかましただけでなく、怪我まで負わせてしまった…小さいけど。ポケットを漁ってみると、絆創膏が出てきたので彼に差し出す。


「えと、はいっ」


だが、一向に受け取る気配がない。なんかびしっ、と固まってる。どうしたんだろうか。そう思ってもう一度声をかけようとするも、それは背後から聞こえてきた盛大な足音と「ななしテメェ待てゴルァ!!!」という怒鳴り声でかき消された。やばい、ゼブラが来た!早く購買へ行ってメロンパンを買わなくては!無理矢理絆創膏を渡し、早々にその場を走り去った。



本日もなんとかメロンパンGETだぜ!


三時限目は競争

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