この学校は、勉強とか部活とかじゃなくて、食べ物に力を入れているという変わった学校だ。学食に限らず、購買の食べ物すら手作りというこだわりようだ。だからいつも食券や購買の売店は荒れている。酷いときには喧嘩が始まる。オイラもよく喧嘩する。ボギーとかサニーって奴とかボギーとか…。あー、思い出しただけでむかつく!
でも今日は運が良かった。他のクラスは体育やらの移動教室だったのか、購買には誰もいなかった。授業サボって正解。置いてあるパンやおにぎりに目をやる。うまそーだよなー、どれにしよっかなー。そう悩んでいたら、騒がしい足音が背後から聞こえてきた。オイラ同様購買に買いに来た生徒らしく、音がこっちに来て背後で止まったが、今度は荒い息が聞こえてくる。全力で走りすぎだろ、こいつ。面倒だから振り向きはしないで、商品と向き合い続ける。そしてめぼしいもんをひょいひょいと六つほど取ると、背後から小さな悲鳴が聞こえた。そんなにオイラが買うとは思ってなかったようだ。さっきから面白いなー、後ろの奴。面白そうだからこいつの目当ての品、買ってやろっかなー。目の前で買い占めてさー、面白そー!そう思って、手を右端からゆっくりと左に動かしていく。背後にいる奴は見てなくても分かるくらいあからさまに慌てだした。何こいつ、笑える。そしてメロンパンの真上に手が来たとき、


「メロンパンだけは、メロンパンだけはメロンパン…」

おい、聞こえてんぞ心の願い。吹き出すのを堪えて、隣に置いてあったカツサンドを掴んで、節乃に渡す。メロンパンなんてオイラが買うわけないじゃん。あんな子供っぽくて甘ったるいモン、頼まれたって食いたくねーっつの。「940円だじょ」はいよー、…お、10円四枚あった。財布からピッタリ940円を出して渡し、オイラの今日の昼食が入った袋を受け取る。クラスに戻る前に顔でも拝んどこーと、購買にオイラと入れ違うように近寄ってきたそいつを見る。




すれ違い様見えた笑顔に、勝手に足が止まった。


他の奴等が見え始めたから、止まった足を無理矢理前へ進める。未練たらしく動く足にイライラする余裕なんてなかった。心臓がうるさい。ばくばくと音が全身で感じてるようだ。 さっきの笑顔が頭から離れない。あんな、一瞬のもの。自分にじゃないし、知らねー奴なのに。何で。何でオレは足が止まった?何で心臓がうるさいんだ?何で?


これ、何だ?


HRは一目惚れ

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -