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死にたがり主とスタージュン

奴隷として拐ってきた女が逃げた、という連絡が先程入った。見つけ次第、早急に捕まえるか処分するかのどちらかを選べ、と言われ、暇潰しにと探すことにした。


が、実際には探すと言うほどでもなかった。廊下を歩いて三十分もしない内に、壁際に物陰を見付けた。

物陰の正体は、人間だった。遠目から、あちこちが泥や血で汚れている服を着た、見慣れない女だと確認できた。奴が脱走した女で間違いはないだろう。音を立てずに、ゆっくりと近付いていく。途中で此方に気がつくだろうと踏んでいたが、手を伸ばせば届くという距離になっても私には気付いていないようだ。一度も此方を見ない。気も私には向いていない。これは少しおかしい。連絡によればこの女は牢獄に等しい部屋から、何人もの部下の目を掻い潜って逃げ出したらしい。だが当の本人はどう見てもそんな能力のない、普通の女にしか見えない。どうやって逃げ出したのだろうか。

「おい」

そう声をかけ、やっと女は私の方を振り返った。目が見開かれ、収縮した黒い瞳が私を映した。小さく開けた口からは母音ばかりがこぼれ落ちる。こうして近くから見ても、一般人と全く代わりはない。本当にどうやって逃げ出したんだ。
どうやって逃げた。そう尋ねる前に、女が口を開き、やっと言葉らしい言葉を吐いた。


「わ、私を殺してくれませんか…?」

今度は私が目を見開く番だった。

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サイト開設前に考えてた話。死にたいんだけど自殺は怖いので他の人に一瞬で殺してもらいたいと常日頃考えている他殺願望のある超能力者な子、みたいな連載をやろうと考えていた。
因みにこの夢主、なんやかんやがあって今のゼブラ連載の夢主となった。

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