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▼ どういうことなのブランチ

※似非関西弁


赤い肌に長い鼻という当に天狗といった特徴を持つブランチは、私の喧嘩友達だ。彼との付き合いは子供の頃からと、結構長かったりする。友達というよりは幼馴染というべきなのか。まあそんなことはどうでもいい。子供の頃はよく二人で喧嘩をしたりイタズラをしたりとやんちゃばかりして、ダルマのおじさんによく叱られたものだ(何度叱られても後悔も反省もしなかったが)。 だが最近はそんなことが全くなくなってしまった。イタズラは当然やらないとして、喧嘩をしようと誘ってみると「んなことやるわけないやろが!」と怒鳴られてしまった。理由は恐らく忙しいのだろうと思っていた。私とやんちゃしていた彼は今やランキング3位の有名な料理人。喧嘩なんてやってる暇はないんだろう。そもそも最近は会うことも少なくなっていたし、グルメ界に店があるため、連絡すらとれなくなった。喧嘩はしたいが、親友として幼馴染として、ブランチの邪魔はしたくない。そう思った私は彼の代わりに私と対等に喧嘩できる相手を探し、そして遂に見つけ出したのだ。名前はゼブラという。四天王一の問題児という、どことなくブランチと似た彼を私は気に入り、相手も私を気に入ったようで、よく喧嘩するようになった。

そんなことが日常化した頃だった。ゼブラとの喧嘩で負った怪我を治そうと、家にあった物を片っ端から食べている時、久しぶりにブランチが家にやってきた。口に食べ物があったから声をかけれず、代わりに席を立って彼の元へ行った。それはいいんだけど、私の姿を見た瞬間、びしぃ、と彼は固まってしまった。どうしたと声をかけようとしたら「な、なんやねんその怪我は!!どないしたん!?」と無駄にでかい声で叫ばれた。煩い、とこちらも叫んだけど、彼の耳は答え意外受信しないようだ。私の怪我を確認するかのようにじろじろ見てきた。どことなく焦っているように見えるのは気のせいだろうか?


「何って…喧嘩だよ」

「はあ!?誰と!?」

「(うるせぇ…)四天王のゼブラ、知ってるだ」


ろ、と言いかけた口は、目の前の人間から溢れ出ている憤怒のオーラによって閉ざされた。溢れ出ているというか、なんかもう身に纏ってる。オーラが鎧ってかもはや武器だ、武器。「…あいつか」と地を這うような呟きが聞こえたので、私に対しての怒りではないのに少し安心する。でも自然と足が動いて、ブランチからちょっと離れる。と、ブランチはいきなり踵を返して扉へと向かう。何処へ行くつもりだと問えば、あのアホん所や、とこれまた地を這うような声で言われた。アホって…流れ的にゼブラのことでいいよな?いや別にゼブラがアホって訳じゃないけど、今は彼しか該当する人間がいないからであってだな。いや自分への言い訳はどうでもいい。何でまた急にゼブラの所に。そう口に出していたのか、ぐるりと首を私の方へ向けて、おっかない顔で理由を言った。


「名前に怪我負わせたんや、それ相応の落とし前つけてもらわんとなぁ…」

「あーなるほ、いやいやいや、待ってブランチ!おい待てや天狗野郎!!」


もう言うことはないとばかりに出て行こうとするブランチの肩を引っ掴み、止める。何言ってんだこいつは。


「だーれが天狗や!!あと手ぇ放さんかい!」

「天狗の画像ぐぐってから鏡で自分の姿見てこい!お前何言ってるの、頭大丈夫!?」

「正常やアホ!お前こそ何でそんな怪我しとんのに平然としてるんや!」

「それが喧嘩ってもんじゃん!あとお前だってよく私に怪我させたろが!」

「顔には怪我負わせたことないで!」

「顔だろうが腕だろうが同じだろ!」

「お前女やろが!そりゃ胸ぺったんこで性格もこんなんでぺったんこやけど、生物学上は女やんけ!」

「お前マジでうるせぇ!!」


ぺったんこ二回言ってんじゃねぇよこの変態天狗!!セクハラで訴えるぞ!
だいたい、喧嘩なんて怪我してなんぼのものじゃないか。今までずっとそうだったし、それを咎められたことなんてなかった。それなのにいきなりどうして女扱いなんて。いやそもそもだ。私が女であるにしても、顔に怪我しようがしまいが


「ブランチには関係ないでしょが!!」

「あるわ!!いくらお前が望んでやったこととしても、自分の女の顔に怪我負わせた奴を許せるかい!!」



 は ?


「そりゃー今までお前をほっぽってたわしが言えることやないけどな、それでも許せることやないで。久しぶりに会った自分の彼女がぎょーさん怪我しおって、それで怒らん男がおるかいな!」

「え、ちょ、ちょっと」

「そもそもなー、フツ―女の顔に怪我負わすか?いくら問題児やからってそのくらいの常識を、」

「待って、待ってブランチ!」


何を言ってるんだこいつは。さっきのは幻聴かと思ったけど、もう一度聞こえてきたから幻聴ではないようだ。「自分の女」「自分の彼女」自惚れでなければこれ等の言葉が示すのは「恋人」だろう。いやでも、しかしだな。



「わ、私とブランチって、その、付き合ってたっけ?」

「………は?」


それは私の台詞だ馬鹿野郎。

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