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▼ アルファロに抱きついてみる

キリリク・アルファロ様と同僚の子のほのぼの



同僚であるアルファロは表情を変えることはあまりない。目がちょっとあれなせいだからな、仕方ないのかもしれないけど。共に働いている私ですら、滅多に見ることがない。あったとしても微々たるもので、はたしてあれは表情と呼べるのだろうか。ただ誤解がないように付け加えておくが、彼は表情を変えることがないだけであって、感情がないわけではない。纏う空気とでもいうのだろうか、何かが変化して、そこから感情を読み取ることができる。簡単なことだと思うんだが、そんな芸当ができるのは私だけらしい(副料理長ら曰くだが)。それは嬉しいことなのかどうなのか。私には分からないが、悪い気はしない。

目の前を歩く、見慣れた八本腕の背中に試しに飛び付いてみた。腕が邪魔で、正直抱きつきにくい。アルファロは此方を見ようとしない。だが動かしていた足を止めてくれる辺り、彼は中々紳士な所がある。



「名前、何をしてるんですか」

「見れば分かるだろう?」

「見なくても分かります」

「それもそうか」


クスクスと笑うと「何が面白いんですか」と返される。ため息こそ聞こえないが、呆れているのだろう。私だって見ずとも彼の心境が分かる。だがそれを言ったところでだから?と一蹴されるのは予想がつくから言わない。代わりにアルファロの胴体に回している腕に力を入れる。


「…ボスのお召しになった食器を運んでいるんです。邪魔しないで頂けますか?」


そう言われれば、彼の前にあるカートには、大量の皿が乗っている。時間帯からして、ボスの昼食の片付けの最中だったのか。別の任務をやっていたから気付かなかった。大変そうだ、私も手伝うべきなんだろうか。だが今はどうでもいい。もう少しこのままでいたい。そして何かしらの反応が欲しいのだ。照れる……は、ないな。想像したら背筋がぶるりと震えた。誤魔化すため、腕に更に力を入れる。結構な力を込めているはずなのに、アルファロの胴体には何のダメージも与えていないようだ。本人からも力についてのお咎めがない(抱きつくのに関してはあるけど)。悲しいかな、これが男女差なのだ。


「逞しいな」

「さっきから、いきなり何なんですか貴女は」

「いや何、気にしないでくれたまえよ」


服の上からでも分かる、がっちりした筋肉。羨ましくはないが、凄いとは思う。
ふと、彼の腕に目をやる。普通より六本多い、逞しい腕。もし、もしも



「その八本の腕に抱き締められたら、どうなんだろうね」

「は?」


おっと、口に出してしまった。心の中の呟きのつもりだったのに。


「…何です、遠回しに私に抱き締められたいと?」

「…そうだと言ったら?」

「、私にしがみついている暇があるなら手伝いなさい」


しがみついているじゃなくて、抱きついていると言って欲しいものだ。
大人しく離れる、その前に彼の顔を盗み見る。何時もの顔と何ら変わりはなく、平然としている。

でも少し照れていると感じるのは、私の勘違いだろうか。

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