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▼ サニーの髪って美味しそう

サニーの髪の毛を触りたいな。
そうお願いすると、丁度ブラッシングを終えたばかりのサニーは微妙な顔をしていた。美にうるさい彼のことだ、折角綺麗にブラッシングした髪の毛にベタベタと触れてほしくないんだろう。でも彼は優しいから、彼女からのお願いをそうばっさりとは切り捨てられない。暫く間を空けてから「手、洗ってこい」というお許しを得た。嬉しくて小走りで洗面所へと向かう。背後から聞こえた「時間かけて綺麗にしろよ!」の言いつけを守り、十五分かけてこれでもかと手を綺麗に洗った。


ベッドの上に二人で並んで座って、彼の背後に回る。念願の髪に触れられるんだと思うと少し緊張したけど、触れたときの心地よい感触に緊張なんか吹っ飛んでしまった。指で解かしてみると、さらさらと滑らかに指の間を髪が通る。彼ほどではないとはいえ、それなりに気を使っている自分の髪の毛とは全く違うその感触に驚き、いっそ感動すら覚えてしまう。髪にしては奇抜な色素を持っているけど、そんなことはどうでもいいと思わせるほど美しく、キラキラと光を優しく反射して光っている。まるで宝石のようだ。綺麗だなぁ、ため息と一緒にぽろりと溢した一人言は、当然目の前にいるサニーに拾われてしまった。「たり前だろ、オレの髪なんだからな」と誇らしげに胸を張った。サニーらしいけど、そういうのは自分で言うよりも謙遜したほうが美しいんじゃないかな?そう尋ねると、お前は何も分かってねーな、と呆れられた。美しいと自覚を持ち、それを誇らしく思うのがより美しいんだよ。彼の言い分はそんなところだった。彼の価値観は独特だと改めて認識する。

白、桃、翠、蒼。あまりにも色鮮やかな髪に、どこか。なんだったっけ、と少し考えて答えは直ぐに見つかった。飴玉。昔、リンちゃんから瓶詰めの飴玉を貰ったんだ。宝石のようにキラキラと光を反射するそれらはサニーの髪と同じくらい綺麗で、食べてしまうのを躊躇わせてしまった。あの飴玉はどんな味だったっけ。




そう考えていたら。自然に、無意識に。私は手にしている綺麗な髪を、ぱくりと口に含んだ。




「っうぉわ!!?」



途端に部屋に響き渡る大声に、髪の毛を口から放した。あ、そういえば彼の髪の毛には神経が通っていたんだった。此方を振り返ったサニーは、とんでもないものを見るような目でわなわなと震えていた。それを見て、ようやく私は自分がしたことの異常さを理解した。


「ご、ごめんサニー」
「名前〜…ごめん、じゃねーよ!!何すんだこのアホ!」


分からないよ、無意識だったんだから。そう言いたいけど納得してくれないだろうから、ごめんねと謝ることしかできない。理由よりも行動への関心が強かったからなのか(それともただインパクトがあったからなのか)それ以上の追及はなかったのは救いだった。あーあ、と呟きながら、彼は私が口にしたであろう髪の束をうんざりとした表情で見つめていた。


「ったく、汚ねだろが」
「サニーの髪はキレイだよ」
「じゃなくて、口内にどんだけ細菌がいると思ってんだ」


サニーの髪の毛じゃなくて、私の口内のことか。確かにそうだけども、私よりも髪の毛を優先されたようで、なんだか面白くない。その言い方はないんじゃないかな、と不満を溢せば此方を見ずに「ホントのことだし」と言われた。それにむっとして、もう一度文句を言おうかと思った。でも、目の前で彼の髪がゆらゆらと揺れる姿がとても綺麗で、不満なんか忘れて見とれてしまった。





サニーの髪は甘くないね、なんて言ったら、どんな反応をするんだろうか。

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