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▼ ブランチはデートしたいようです

リクエスト:関西弁でおとなしい彼女の夢主を溺愛するブランチ
※偽関西弁



ワシほどの料理人になると、滅多に休みと言うもんがなく、ほぼ毎日仕事漬けになる。まぁワシとて疲れたときはちゃんと休みをとる。それが来週。ワシと一緒に働いとる名前も言わずもがな休み。
同僚でありワシの彼女でもある名前は今、片付けを終えて二人っきりのスタッフルームでワシと自分の茶を淹れとる。
名前の背中に、「なぁ」と声をかけた。


「名前はどっか行きたい場所あるか?」


脈絡もない質問に、名前は顔を此方に向けて、ゆっくりと数度の瞬きをしながらワシを見る。名前らしいその仕草が好きやったりする。いや全部好きやけど。


「…行きたい場所?」
「そや。ないんか?こう、店とか」
「んー…特に思い浮かばんけど」


ちょいといきなりすぎたか。ほら来週休みやん、と言えば理解したのか、小さく笑いながらワシの前に湯飲みを置く。


「もしかして、デートのお誘い?」
「あったり前やん!それ以外何がある思てんねん」
「嬉しいわ」


ごっつかわええなぁもう抱きしめたろか!その言葉を茶で喉ん奥に流し込んだ。うん、うまい。

ワシも名前も、妖食界からあまり出ぇへん。出るとしても行き先は大抵グルメ界。店に出す料理の食材を捕りに名前と出向く。その時には名前手製の弁当を見晴らしのええ場所で食ったりと、ピクニック的なことを毎回しとる。それだけでもワシは満足してるが、名前は女の子。ショッピングとか洒落た店でケーキ食ったりとか、やりたいことはあるやろな。そう思って、今回の休みは名前とのデートにあてると決めた。ほんまはこう、サプライズにしたかったんやが、名前の行きたい場所なんて全く心当たりあらへんし、ワシが検討違いな場所決めて落ち込ませるのは嫌やったから仕方ない。要は名前を喜ばせたらいいんや。


「で、ないんか?」
「確かにブランチと行ってみたい店とか場所はあるけど…」
「なんや」
「ブランチ有名やから、お出かけ先大騒ぎになりそうやん」


確かに。ワシが人間界なんかに、しかも遊園地やらのデートスポットに現れでもしたら大騒ぎなんてもんやない。…騒ぐ原因はワシの見た目やと思うが。ひ弱な一般人の中じゃワシの風貌は明らかに浮くからな。いやワシはかまへん(怒鳴りゃ一発で逃げるはずやし)が、名前に居心地悪い思いはさせたくないしな。折角のデートにんな思いさせたら本末転倒や。しゃーない、人間界は諦めるか。せやけどなぁ〜……人間界あかんかったら残るはグルメ界のみ。デート向きな場所とは到底思えん。のろま雨の丘ならまあまあロマンチックやけど、あそこ辛気くっさいからのぉ。どうせやったら天気のいい場所で弁当でも食いたい…やっとるわな、よく。

名案が思い浮かばず、結局デートは諦めることに。男として情けへん。


「すまんのぉー、名前…」
「気にせんといて。私人混みは好かんし…」


少し照れたように笑いながら、大変な爆弾を落としよった。


「それに、私はブランチといれるなら何処でもええよ」


今度は我慢せず、思いっきり抱き締めた。

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