ログ | ナノ


▼ スタージュンで暖をとる

「……寒いっ」
「そうか?アイスヘルほど気温は低くないだろう」
「比較する基準がおかしいですよ」


只今の気温、およそ−20℃前後。仕事のため仕方なくスタージュン様に同行して訪れた地は、極寒の大陸だった。そんな大陸を、私はスタージュン様と二人で探索している。来てから既に1時間は経ったはずなのに、未だに猛獣らしい影は見ていない。むしろ生物が存在するのかを疑うくらい物寂しい大陸だ。それがより一層、寒さを増幅させる。何かしら猛獣が出てきてくれれば、体を動かして少しは暖まるというのに。確かにアイスヘルほどではないし耐えきれる気温だけれども、寒いものは寒い。一歩歩くのも億劫に感じてしまう。
本来ならばこんなところの調査にはGTロボで赴くべきなんだけれど、スタージュン様は自分の実力を存分に発揮できないGTロボを使うのを好まない。だから今回は生身で行くとおっしゃられた。まさか上司が(無いに等しいが)色々なリスクを背負った生身なのに、部下である私が安全確実なGTロボで行くわけにはいかないだろう。そんなわけで同行する私も生身で来るはめになってしまった。こんな寒い思いをする原因はどう考えても上司が……ああ でも、後の二人の上司も体型的(翅と四本腕)にGTロボの操作は不可能だった気がする。それならまだ横暴かつ気紛れでない分、スタージュン様でよかった。食運ないけ「名前」


「は、はい。何ですか?」
「寒いのなら、もう少し私に近寄れ」
「え」
「体温を上げる。あまり高くはできないが、少しはましになるだろう」


…上司の優しさに感動しました。食運ないとか思ってごめんなさい。そんなのなくても貴方は素晴らしい上司です。
寒くて歩みが遅くなったのか、ただスタージュン様の歩幅が大きいからなのか。いつの間にか私達の間には十歩分の距離があった。お言葉に甘えようと、小走りでスタージュン様に向かう。まるでストーブのような暖かさに、まともな思考が停止してしまった。さながら夜、灯りに群がる虫のように、私はスタージュン様の背中に抱きついた。


「……近寄れとは言ったが、抱きつけとは言ってない」
「堅いこと言わないでくださいよ、自然現象なんですから……あったかー…まさに天国」
「お前の天国は私の背中か」
「今はそうですね」
「随分とくだらない場所にあるな」


それはつまり、貴方の背中はくだらないってことになるんだが。いいのかそれ。


「それよりも」
「っわ!」


ぎゅ、と正面から抱きしめられた。とっさに離れようと抵抗するも、到底できるはずもなく。


「こうしたほうが暖かいだろう?」


まあその通りなので。
この状況に甘えようと、抱きしめ返した。



「でもこれだと歩けなくないですか?」
「なら離れるか」
「このままでいましょう」

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -